【婚姻費用】相手方が遠隔地に居住している場合の管轄をこちら側に発生させる手法

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女性の側が多いのでしょうが、別居してご実家に戻られるか、あるいはご自身で賃貸物件を借りられてある程度生活基盤を整えてから婚姻費用分担調停を申し立てるケースはよくあります。

しかし、相手方(夫)との間に物理的距離が発生し、いわゆる遠隔地となった場合、調停を申し立てる裁判所は、夫の住居地を管轄する家庭裁判所となりますので、わざわざ遠い裁判所に申立てをして、わざわざ遠い裁判所に行かなければならないのでしょうか。原則はそうです。交通費等がかかりますし、小さなお子さんがいらっしゃる場合などは大変です。

このような問題に対処するため、時に別の方法をとる場合があります。具体的には、保全の申立てです。まず、婚費の調停ではなく、いきなり審判を申し立てて(自分の住居地を管轄する家裁にです。)、それと同時に、「審判前の保全処分」の申立てをします。すると家裁は、保全事件に関しては速やかに処理しなければなりませんので、同保全処分の審理を待ったなしで行うことになります。そして、保全処分の発令と同時に、本案事件についても処理されることが多いかと思います。これにより、遠隔地における場合であっても、自らの近くの裁判所を利用することが可能になります。裏技的な感じですが、私も過去に何度かやったことがあります。

とはいえ、相手方は電話会議で参加できますし、コロナ後はWEB会議も増えてきましたので、その意味では、婚費の調停で何としても管轄をこちら側に発生させなければならないという必要性は減少しているのかもしれません。しかし、相手方からカウンターで離婚調停を申し立てられることもよくあり、その場合は、管轄がどちらに発生したかという点は重要です。離婚調停が成立する期日には、実際に本人が出頭しなければならないからです。そして、婚費調停が係属している家裁で離婚調停も審理されることになるのが通常です。ですので、こちら側は婚費だけを請求したくて(自ら進んで離婚を求めるような状況になく)、ただ相手方は離婚を求めているような場合には、管轄を有利に進めるべく、検討する価値のある手法かと考えます。

(2022.11.22 弁護士 中川内 峰幸)