2024/06/14
引き続きM&Aのお話を。
「反社条項」をご存じでしょうか?
名称だけで大体のイメージは湧くかと思われますが、反社条項とは、契約を締結する際に、自ら又はその関係者が反社会的勢力に属していないことや、契約の相手方等に対して暴力的な要求行為等を行わないことを、相互に確約し保証するための条項です。「反社会的勢力の排除に関する条項」「暴力団排除条項」ともいわれます。
これは特にM&Aの契約書に特有のものではございません。売買契約書や業務委託契約書といったよく見られる契約書においても用いられています。また、金融機関等の約款にも規定されていますので、我々の生活に実は広く浸透しているものです。
契約書の中にこの反社条項を置くことにより、契約の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、直ちに契約を解除することができます(なお、M&Aの場合には、解除はクロージング前に限られることが多いでしょう。詳しくは、本ブログの他の記事をご参照ください。)。また、かかる事実が判明した場合に損害賠償請求ができる旨の規定も併せて置かれることがあります。実際に反社から金銭を回収することができるかは不透明ですが、反社からの請求に対して対等額で相殺を主張できるという点で意味があるといえるでしょう。
コンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)の観点から、反社条項を盛り込むことが社会的に推奨されていますが、それだけでなく、万が一、実際に契約の相手方が反社会的勢力の人間であると判明した場合に、自らを守ることができるように、反社条項は必ず規定することが重要です。
とはいえ、株式譲渡契約書等の雛形には、通常、反社条項がテンプレ的に規定されていますので、反社ではない善良な皆様は、あまり注意せずに読み飛ばしているというのが実情ではないでしょうか。あるいは、ちゃんとした仲介業者が持ってきた案件の当事者が反社なはずないだろう、とお思いになるかもしれません。
しかし、昨今のM&Aに関するトラブルの報道を見るにつけ、どうも組織的集団犯罪ではないかと思われるような事件が多発しているように思えてなりません。
M&Aの手法を利用して安価で企業買収を行い、その対象企業の資産だけを抜き取り、前経営者の個人保証(経営者保証)も引き継がずに失踪するという手口は、その背景に反社的な者の存在を疑わずにはおられません。こうなると、「M&Aトラブル」というよりも、「M&A詐欺」と呼称する方が実態に即しているのではないかと考えます。そして、おそらくはこれと同種の事案ではないかと思われる被害者の方から当事務所へのご相談も、最近いくつか頂戴しております。
また実際に私が過去に手掛けたM&Aのトラブルで裁判となったケースでも、訴訟の相手方が反社ではないかと疑われた事件がありました(結果、それを証明する証拠が入手できなかったのですが。)。
いずれにせよ、反社条項は、単にテンプレ的に規定されているだけと思われるかもしれませんが、実は皆様を守護する「お守り」のような存在です。お時間のある時に、内容をご一読されることをお勧めいたします。
M&Aトラブルでお困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお気軽にお問い合わせください。
詳しくは、下のバナーをクリックください。
(弁護士 中川内 峰幸)