債務整理で退職金の額が問題となる場合

正社員で5年以上お勤めの方は、裁判所に自己破産や個人再生を申し立てる際に、今現在の時点で仮に退職したら(自己都合退職です。)幾ら退職金が支給されるのかという資料を提出する必要があります。実際に退職する必要はありません。自己破産の場合には、管財事件への振り分けの判断資料として必要ですし、個人再生の場合には、清算価値を把握する目的で必要となります。なお、任意整理の場合には、裁判所を使う手続きではありませんので、これら資料は必要ありません。

さて、どのような資料を用意すればいいのでしょうか。最も明確なのは、会社が退職金額証明書(様式は問いません。)を発行してくれた場合、これを提出すれば、通常、裁判所は何も言わないでしょう。ただし、きちんと社印の押してあるものが必要です。

しかし会社に言い出しにくい場合(「なぜそのようなものがいるのか」と聞かれて返答に窮してしまう方は結構いらっしゃいます。)には、職場備え付けの退職金規定のコピーを取得し、これに自身の係数等をかけ合わせる等して自分で退職金額がきちんと算定できるのであれば、これで代わりとすることができる場合もあります。

あるいは、経理の方にメールで問い合わせをして、これに同人よりメールで返信を受ける形で、当該メールをプリントアウトして裁判所に提出し、無事に認められたケースもあります。そのような方法で裁判所が認めてくれるか否かは、内容の信ぴょう性次第となります。

また、中退共や確定拠出年金を退職金代わりに採用している企業もあります。これらは、法律上、差押禁止債権とされており、本来的自由財産となりますので、申立人の財産として計上する必要はありません。ただし、勤め先がこれら制度を利用しているということを疎明する資料の提出が必要となります。退職金規定内にその旨の規定があるのであれば、同規定を提出することでクリアできるでしょう。

そして、退職金の算定方法ですが、原則8分の1で考えます。なぜ8分の1かというと、退職金請求権のうち、差押可能な範囲が4分の1で、また、退職するまでの間に会社が倒産したり申立人が懲戒解雇されたりするなど不確定な要素がありますので、これを2分の1と考え、1/4×1/2=1/8という計算になるというわけです。ですので、定年退職までに間がないといった場合には、8分の1ではなく4分の1で計上せよと言われる可能性が高まりますし、実際に退職金を受領してしまった場合には、当該金員は通常の預金債権や現金に姿を変え、その全額を財産として計上しなくてはならなくなります。

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(弁護士 中川内 峰幸)