2024/05/14
「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」という朝日新聞の連載記事(藤田知也記者・全6回)を読みました。有料記事なので転載することはできませんが、興味のある方はご覧になってみてください。
連載「M&A仲介の罠」一覧 – A-stories(エーストーリーズ):朝日新聞デジタル (asahi.com)
内容としては、タイトルどおり、M&A仲介業者の問題点について警鐘を鳴らす記事であり(M&A仲介業者の問題点については、このブログでも過去に述べたことがあります。)、その点につき特段目新しいものはなかったのですが、記事が取り上げている具体的事件に強く興味を惹かれました。
すなわち、表向きは事業再生を目的とする特定の法人グループが、数多くのM&Aを用いて子会社化した企業から同法人グループへと資金移動をさせている(結果、子会社が破綻。)といった実に不可解な事例を取材した記事でした。同法人グループの代表は、現在行方不明とのことです。
しかし結局のところ、同記事では、この法人グループの(あるいは同グループ代表の)真の意図がどこにあったのかという点が明らかとなっていないことから、読了感としては、いささか消化不良のもやもや感が残る内容でした。
これは少し前に世間を騒がせたトケマッチのような、当初から計画された犯罪行為なのか(とすると、模倣犯が発生しうるのか、あるいは集団的犯罪で別に黒幕が存在するのか…同代表の行動からすると、そのような気もします。)、あるいは本当にただ自転車操業的にM&Aを繰り返して進退窮まったのか(これはあまり考えられないと思うのですが…)。全容が解明した暁には、ぜひとも続報を読んでみたいところです。
いずれにせよ、M&Aは仲介業者におんぶにだっこでは大変なことになるということの一事例であることには間違いありません。また、ある程度の売り上げがあるといっても現状で赤字に陥っている会社を購入したいと希望する者が現れた場合に、その意図を探る作業は当然に必要でしょう。M&Aを用いる事業再生は、そんなに簡単なものではありませんし、火の車の会社を引き取ってくれてかつ個人保証も承継してくれるなどという「うまい話」がそうそう転がっていると考えるのは危険です。
そして上述のとおり、M&A仲介業者の構造的問題についてはかねてから指摘がなされているところですが、M&A後のトラブルを回避するためには、売主及び買主が当事者意識をもって取引に応じる必要があるということは、このような記事で繰り返し周知していく必要があると考えます。
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(弁護士 中川内 峰幸)