勾留中に病気になってしまったら

●はじめに

勾留されてしまった場合、留置場での生活は快適なものではなく、慣れない環境の中で体調を崩される方も多くいらっしゃいます。そのため、私は接見する際、「体調はいかがですか」とお声がけするようにしています。今回のコラムでは、勾留中に病気になってしまったらどうするのかというテーマでお話しします。

●留置場での医療

勾留されている間、月に2回、留置場内で医師による健康診断を受けることができます。健康診断といっても、血圧と体重を測定し、健康状態について医師が口頭で確認するという程度です。健康診断の際に薬がもらえる可能性もありますが、医師によって対応は異なります。また、体調が悪くなった場合には、留置担当官に申し出ることにより、外部の医療機関やかかりつけの医療機関で診察・治療を受けることができます。ただし、私の経験上ですが、吐き気がする、湿疹ができているなどの症状で、外部の医療機関やかかりつけの医療機関での診察・治療を希望したとしても、留置担当官が対応しないということもありました。

では、法律上はどのように定められているのでしょうか。

刑事施設収用法201条は、

① (被留置者が)負傷し、もしくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき

② (被留置者が)飲食物を摂取しない場合において、その生命に危険が及ぶおそれがあるとき

には、速やかに委託する医師による診察その他必要な医療上の措置を執ることを義務付けるとともに、病院又は診療所に通院・入院させることを認めています。

さらに、同法202条は、

留置業務管理者は、負傷し、又は疾病にかかっている被留置者が、当該留置業務管理者が委嘱する医師等以外の医師等を指名して、その診療を受けることを申請した場合において、傷病の種類及び程度、留置施設に留置される前にその医師等による診療を受けていたことその他の事情に照らして、その被留置者の医療上適当であると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、留置施設内又は留置業務管理者が適当と認める病院若しくは診療所において、自弁によりその診療を受けることを許すことができる。

と規定しています。

つまり、かかりつけの医療機関による通院治療も法律上認められる可能性があります。

●もし、適切な診察・治療を受けられない場合

留置担当官に体調不良を申し出たとしても、適切な診察・治療を受けられないこともあり得ます。そのよう場合には、弁護士が、健康状態や病名を聴取し、留置業務管理者に対して適切な医療上の措置を講ずるように申し入れをします。

●おわりに

留置場で体調が悪くなった場合には、留置担当官に伝えるようにしてください。もっとも、留置担当官が怖くて伝えられない、伝えたとしても対応してもらえない場合なども見受けられます。そのような場合は、弁護士から留置担当官に対し、適切な医療措置を講ずるように申し入れをしますので、遠慮なくご相談ください。

(弁護士 山本祥大)