【個人再生】再生委員がつくケースとは

「個人再生委員」という言葉は、皆様あまり耳にすることはないかもしれません。

これが「破産管財人」となると、ある程度イメージが湧くかもしれませんね。破産管財人は、自己破産手続を申し立てる際、一定の場合に裁判所により選任される者で、申立人代理人とは別の弁護士が選ばれます。選任される代表的なケースとしては、免責不許可事由がある場合や、財産があり配当が予定される場合などが挙げられます。

これと同じく、個人再生委員は、個人再生手続を申し立てた際に、裁判所により選任される者であり、公平中立な機関であるといえます。

個人再生委員がどのような業務を行うかというと、①申立人の財産及び収入状況の調査、②再生計画案につき、申立人に対し必要な勧告を行うこと、といった内容となります。

さて、この個人再生委員、東京地裁本庁で申立をする場合には全件選任されるらしいですが、その他の地域、少なくとも神戸地裁においては、原則選任されませんので、ご安心ください。複雑な事件の場合に、例外的に選任されるという運用となっています。

個人再生委員がつけられると、同委員に対する報酬も数十万円別途必要となりますし、同委員からの質問等にきちんと対応する義務が生じるため、経済的にも、労力的にも、時間的にもしんどい手続となってしまいます。つかない方が楽であることは、間違いありません。

それでは、どのような場合に個人再生委員が付されるのでしょうか? 答えとしては、「複雑な事件」ということになります。そしてどのようなものが「複雑」かというと、事案によるというほかないでしょう。

しかしそれでは説明になりませんので、具体的なお話をしますと、過去に当事務所で取り扱った個人再生事件で再生委員が付されたものとしては、やはり自営業者の方の事件が多いと言えます。すなわち、サラリーマン(給与所得者)であれば、給与明細や源泉等により収入の内容が明瞭ですが、自営業の方は、そこらへんの操作が容易ですし、また、帳簿をつけていても独自ルールにより複雑で収支関係がよくわからないという場合があります。そのようなケースでは、裁判所が個人再生委員を選任して調査させましょうということになりやすいと言えます。

他には、財産の評価が困難なケースなども挙げられるでしょう。当事務所で実際にあったのは、不動産の評価が困難で、固定資産評価額と不動産業者による査定との間に大きな乖離があった事案で、清算価値を把握する目的から個人再生委員が付されたということもありました。

あるいは、家計収支の内容が心もとなく(毎月の収支が赤字ギリギリなど)、履行可能性に不安がある場合などにも、個人再生委員が付されてその点を指導されるといったケースもよくあります。ここでは、破産管財人に毎月家計簿を提出するのと同じような手続きが要請されます。

それ以外では、債務額が多く、かつ、個人の債権者が多数存在する場合なども、同人らが意見を述べたりと複雑な手続きが想定されることから、再生委員が選任される可能性が高まります。また、住宅特則を利用できるケースなのか判然としない事案の場合にも、個人再生委員が付されることがあります。

繰り返しとなりますが、再生委員が付されると、ご依頼者にとってもかなり負担が増大します。当事務所では、再生委員がつく可能性に関しても、事案に則してご説明させていただいております。同委員が選任されることを回避するのであれば、頑張って任意整理するということも考えられますが、それが可能であるかは、お客様の資力次第ということになります。

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(弁護士 中川内 峰幸)