地銀にM&A仲介の能力があるのか

いささか過激な見出しとなってしまいました。趣旨は次のとおりです。

時事通信の記事を目にしました。以下引用ですが、「金融庁は27日、金融機関に対し顧客企業のM&A(合併・買収)支援に積極的に取り組むことを求める監督指針の改正案を示した。地銀などを念頭に、金融機関がコンサルティング機能を発揮し、後継者不足に悩む中小企業のM&Aを後押しすることを狙う。意見公募を経て今秋にも正式決定する。」とのことです。日経でも同旨の記事があったかと思います。

地銀が日常的に地元中小企業の経営問題に接していることから適任だとの発想だとすると、これは安直だと言わざるを得ないと考えます。

過去に私が携わったM&Aトラブルの訴訟において、とある地銀が仲介をしていた案件がありました。内容はご紹介できませんが、実に杜撰な業務を行っており、同地銀がきちんとアドバイザリー契約の責務を果たしていたならば、そもそもこのような紛争は発生しなかったのではないかと思われる事案でした。実際、同地銀に対して事実の照会をかけたのですが、保身に走る回答しか出てきませんでした。無責任極まりないと思われる対応でした。この事件では、同地銀の仲介によるM&Aにより、実際に一つの企業が経営不振となり、売主も買主も双方が極めて不幸な状況となったのですが、その地銀だけはきっちりと報酬を得て、独り勝ちの状況でした。猫も杓子もM&A仲介に手を出すようになり始めた頃の話で、多くの地銀が即席のM&A担当部署を設置した時期でした。その担当した行員に、M&Aの詳しい知識があったとは到底思えませんでした。

公知のとおり、M&A仲介には何らの資格も不要ですので、実際、既に多くの地銀が新規分野への進出を目してM&A仲介市場に参入しておりますが、果たして専門的な知識が担保されているのでしょうか? また、人的資源の問題(優秀な人材は、より高給が期待できる既存のM&A仲介会社へ流れるのではないかという懸念です。)もありますが、そもそも転勤の多い銀行員が案件に携わることによって、事後的に責任の所在が不明瞭になることへの不安も生じます。そして、仮に地銀がM&Aに携わるとしても、別に仲介を推奨しなければならない理由はないのですから、メガバンクのようにFAに徹することも、検討に値するのではないかと思われます。

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(弁護士 中川内 峰幸)