2024/07/02
借金問題で自己破産や個人再生のご相談を受ける際、「会社にバレないでしょうか…?」というご質問をいただくことが多いです。任意整理の場合はともかく、裁判所を使う自己破産や個人再生の手続きの場合には、どこからか会社に、自身がそのような手続きをしているという情報が届いてしまうのではないかと心配されるお気持ちはよくわかります。この点につきご説明しましょう。
まず、会社からの借入がない場合には、原則会社に知られることはありません。弁護士から会社に通知を送ることも、裁判所から会社に連絡がいくこともありません。ただし、会社からの借入がある場合には、会社も債権者となってしまいますので、弁護士から介入通知を送らなければなりません。会社から借りているのにも関わらず、これを隠して手続きを行うことはできません。また、会社にだけ返済をして債務を無くしてしまうこともお勧めしません。これは偏頗弁済といって、債権者平等原則に反する不公平な返済となりますので、裁判所によりペナルティが課されます。確信犯的にそのようなことをした場合、免責が得られない可能性もあります。なお、会社から継続的に「前借り」をして生活をされている方がいらっしゃいます。この前借りは、毎月のお給料から引かれる形で返済しているわけですが、これも借入に当たり、また偏頗弁済に該当しうるので注意が必要です。
次に、自己破産や個人再生を申し立てる際には、退職金の額を証明する資料を裁判所に提出しなければならない場合があります。その際、会社に正直に打ち明けて退職金証明書を発行してもらえれば話は早いのですが、なかなか言い出せない方もいらっしゃいます。そのような場合には、退職金規定等から独自に算定ができればそれで解決する場合もあるのですが、それが不可能であれば、やはり会社に対して説明が必要となるでしょう。もっとも、「住宅ローンを組む際に銀行に提出する必要があるので」などとうまく言って退職金証明書を取得される強者もいらっしゃいます。たしかに、様式は問いませんので、裁判所宛てでなくても問題はありません。
また、珍しい会社への「バレ方」としては、金融機関へお給料が振込できないことから発覚するといったケースもあります。どういうことかと言いますと、住宅特則付きの個人再生事件において、給与の振込先口座と、住宅ローン及びその他の借入等の引落口座が同一の場合、各金融機関によって取り扱いが区々(まちまち)なのです。大手の金融機関なら問題がないケースが多いのですが、地銀や信金などでは、住宅ローンとその他の返済をすぐに別口座に分けてくれず、かつ、弁護士からの受任通知が届いた後の会社からの給与の振込をはねてしまい、口座への入金がなされないといったことがあります。とすると、会社としては、「給与が振込できずに返ってきたぞ、これはどういうことか」ということになり、申立人は「実は…」と白状せねばならない事態に陥る可能性があるということです。当事務所で過去に実際にありました。
そして、これは法的手続のみに限った話ではないのですが、支払を遅滞しており、債権者より訴訟を提起された場合ですね。判決を取られ、その後は強制執行を受ける段階となりますが、債権者により給与債権を差し押さえられた場合には、もちろん会社に知られてしまいます。ですので、訴訟を起こされる前に、できるだけ早期に弁護士に相談されることをお勧めいたします。
最後に、官報です。自己破産の場合には2回、個人再生の場合には3回官報に掲載されますが、これを会社の誰かが見ていたら、知られてしまいます。とはいえ、官報を日常的にチェックしている方はそうはいませんので、このことを怖れて法的手続を断念するというのはナンセンスであると考えます(もっとも、公務員の方々はやはりこの点を不安視して、自己破産ではなく個人再生を選択される方が多いですね。)。
このように、会社が債権者でないとしても、いくつかのルートで会社の知るところとなってしまう場合があります。より詳細にお知りになりたいという方は、神戸のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。相談は無料です。詳しくは、下のバナーをクリックください。
(弁護士 中川内 峰幸)