【懲役】財産開示手続とは【罰金】

ここ数年の話ですが、「財産開示手続」というものを申立てられたとしてご相談に来られるお客様が目に付くようになってきました。

この財産開示手続、以前から存在はしていたのですが、実効性に乏しい内容でしたので、あまり利用されることはありませんでした。

すなわち、債権者が訴訟を提起して債務名義(勝訴判決です。)を取得したとしても、債務者が任意に支払いをしない場合、別途、強制執行(財産の差押えですね。)を行わなければなりません。しかし強制執行をするためには、債務者の財産を特定しなければならないところ、債権者がこれを探索することは困難を伴うケースも多く、結局、債権者が苦労して取得した債務名義も、ただの紙切れとなってしまうことがままあるのです。

そのような際、財産開示手続を利用すれば、裁判所のもと、債務者が自らの財産を開示することとなり、債権者による回収の道が開けるというわけです。同手続では、債務者は裁判所に出頭して、自ら財産を開示しなければなりません(ちなみに非公開の手続です。)。

ところが、上に「あまり利用されることはなかった」と書きました。なぜなら、以前の法律では、債務者がこの手続を無視したとしても、30万円以下の過料にしか処せられなかったのです。過料は、刑事罰ではなく行政罰ですので、「財産を差し押さえられるぐらいならば過料を支払った方がマシだ」という考えから、債務者が裁判所に出頭しないということが往々にしてあったのです。それゆえ、債権者にとっても魅力がなく、あまり利用されることのない手続でした。

そのような状況の中、民事執行法が2020年に改正されました。同改正法では、財産開示手続を債務者が無視した場合、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金へと厳罰化がなされました。「懲役」があるというのは、かなりインパクトが強く、債務者としても財産開示を無視しづらい状況となりました。反面、債権者側としても、その実効性に期待して財産開示手続を頻繁に申し立てるようになりました。

ですので、今日では、消費者金融等からの借入を放置していますと訴訟を起こされますが、これを更に放置していますと、そのうち、この財産開示手続を申し立てられるおそれがあるということになります。そして、これも無視するとどうなるかというと・・・法律上の規定では、上に見たような罰則が予定されていますが、実際はどうなのでしょうか。

この点につき、チラホラと報道がなされており、また検察統計も出ているようですが、なかなかに債権者側のハードルは高いようですね。まず債権者は、債務者に同法違反があるとして告発する必要があります。しかしその後、検察が嫌疑不十分として不起訴とする場合も多く、その場合は検察審査会に別途申立をする必要があります。そして、そのようなかなりの労力をかけた結果、略式で終わる事案も多いみたいですね。そこまでして実際に回収ができるのか。あるいはその時点では既に債務者に刑事罰を与えることが目的となっているのか。いずれにせよ、債権者の執念を感じます。ですので、費用対効果を考えると、貸金業者がそこまでするかは不明です。

改正法の趣旨が今後どこまで実務に反映されるのかという点は、引き続き注目する必要があります。しかし、財産開示手続を利用する貸金業者が増加していることは事実です。申し立てられた方は、ご相談ください。

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(弁護士 中川内 峰幸)