【債務整理】契約者貸付とは【保険】

債務整理のご相談を受ける際、「保険には入られていますか」と必ずお聞きします。家計の支出内容を把握する目的もありますが、それとは別に、ご相談者の財産状況を把握する目的もあります。

といいますのは、自己破産や個人再生を申立てる際、保険に加入している場合には、裁判所に対して保険証書以外に、解約返戻金証明書も提出する必要があるのです。仮に今現在の時点で解約した場合に幾ら返ってくるかということの証明ですね(実際に解約する必要はありません。)。これは保険会社にお願いすると書面で出してもらえます。解約返戻金がゼロならゼロで、その旨の疎明資料を提出することになります。

なぜこのような解約返戻金額が問題となるのかというと、その金額が20万円以上の場合、神戸地裁では自動的に管財事件となってしまうのです。自己破産における同廃・管財の振り分けの判断資料として必要となるというわけですね。また、個人再生の場合には、同返戻金額が財産として計上されますので、最低弁済額につき清算価値が基準となるのか否かについての判断資料として必要になるということです。任意整理の場合には、裁判所に資料を提出するということにはなりませんが、最終的に支払いが困難な場合には当該解約返戻金(多額であればですが)を原資とすることが検討に値するケースもありえます。

さて、これに関連しまして、保険契約における契約者貸付というものがあります。「貸付」とあるのでこれは債務なのだろうかと思われる方もいらっしゃいますが、結論から申し上げますと、これは債務ではありません。ですので、弁護士から受任通知を送ることもありませんし、債権者一覧表にも載せません。なぜなら、契約者貸付は、解約返戻金の前払いと考えられているからです。

先ほど申し上げましたように、解約返戻金の額が多額に上ると、それだけで管財事件となってしまう可能性があります。ですので、これを契約者貸付でもって減らして同廃基準内にとどめたいという考えが生じるのは自然なことです。解約返戻金額-契約者貸付額が、財産価額となるからです。

しかし、意図的にそのような操作をすることはお勧めしません。裁判所は必ず当該契約者貸付の目的・使途につき追及してきますので、恣意的な操作は財産隠しと同視されるおそれがあります。この点、裁判所から指摘を受けることの少ない使途としては、税金の滞納分の支払や、弁護士費用への支出ということになりますが、それ以外に、例えば子の進学費用に充てたとか家電を買い替えたなどの理由の場合には、裁判所によって否定される可能性が高いことを頭に入れておく必要があるでしょう。

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(弁護士 中川内 峰幸)