2024/07/23
偏頗弁済とは、ちょっと難しい漢字ですが、「へんぱべんさい」と読みます。これも免責不許可事由の一つとなります。
条文上は、破産法252条1項3号に、「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと」と規定されています。
平たく言いますと、偏った弁済ということです。債権者平等の原則という建前があり、債権者は全てを等しく扱わないといけないことになっているのですが、特定の債権者にのみ弁済(借金を返済することです。)をしてしまうと、この原則に違反してしまうので禁止されているというわけですね。
ですので、法律相談の際には、全ての債権者につきお聞きするとともに、個人からの借入がないかということや、誰か親族の方に保証人になってもらっていないかといったことを必ずご確認させていただいております。ここに個人というのは、貸金業者や金融機関以外の者のことを意味しており、親族の方やご友人、あるいはお勤め先の会社なども含まれます。また、社会福祉協議会からの借入も多く見られますが、これも債権者ですので、平等に扱う必要があります。
さて、自己破産や個人再生を行う際には、全ての債権者に受任通知を送り、同手続に含めて処理しなければなりません。ですので、個人からの借入がある場合、親族やご友人や会社などに、破産や再生をすることが知られてしまいます。あるいは、自己破産により借金がゼロとなることにつき非難されるかもしれません。しかし、だからといって、その特定の個人にのみ返済をしてしまうと、上述の偏頗弁済、偏った弁済ということになり、免責不許可事由となってしまいますのでご注意ください。
偏頗弁済をしてしまった場合にどうなるかというと、自己破産の場合には破産管財人が選任され、同管財人がご友人等に対して返還請求をするといった事態になりかねません。それでもご友人等が返還に応じない場合には、破産管財人が当該ご友人等を被告として訴訟を提起するといった場合も想定されます。そうなると大変なことでしょう。個人再生の場合には、偏頗弁済を行った金額を清算価値に上乗せするように裁判所より指示がなされる場合が多いですが、確信犯的に多額の偏頗弁済を行ったとみられるケースでは、そもそも個人再生が認められないでしょう。
どうしてもご友人やご親族に話せない、迷惑をかけられない、というような場合には、任意整理で当該個人以外の借金を整理することを検討しますが、現状の収入で分割返済の示談がまとまりそうにない状況ということですと、やはり事前に当該個人の方々にお話をしてもらった上で、自己破産や個人再生を行うしかないということになります。なお、免責を得た後は債権者に支払う義務はなくなりますが、お世話になったご親族等に少しでも返したいというお気持ちから、任意に返済をする分には禁止されておりませんので、あるいはそのような話を事前に説明して納得してもらうというのも一つの方法です。
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(弁護士 中川内 峰幸)