【婚姻費用とは? 請求するためのポイント】

1 婚姻費用とは 

 婚姻期間中(離婚するまでの間)、収入の低い配偶者は、収入の高い配偶者に対して、自身の生活費や子供の養育費などの支払いを請求できます。この、生活費や子どもの養育費などを婚姻費用と言います。夫の収入の方が高い場合、妻が権利者(請求する側)、夫が義務者(支払いをする側)となります。※以下では、妻が権利者であることを前提とします。

 婚姻費用が問題となるのは、夫婦が別居している場合が多いです。別居している場合、妻は、自身で住居費や食費などの生活費を確保する必要があります。また、子どもを連れて別居している場合には、子どもの養育費用も必要となります。このように、別居後の生活や養育のために必要な費用を夫に対し請求することができます。

2 どうやって請求するのか?

 婚姻費用は、別居した月から請求することができます。メールやラインで夫に婚姻費用を請求して夫が支払ってくれたらよいのですが、実際のところ、全く支払いに応じないケースも見受けられます。また、別居に至った経緯から、妻が夫に連絡を取ることができないケースも見受けられます。  夫が婚姻費用を支払わない場合(支払うことが期待できない場合)には、早急に、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる必要があります。

⑴ 調停とは

 調停とは、裁判所を利用する手続きなのですが、裁判のような厳格な手続きではなく、裁判所で当事者同士が話合いをする手続きです。話合いと言っても当事者同士(夫婦)が対面して話をするわけではなく、当事者が調停委員と交互に話をし、調停委員を介して話合いをします。そのため、当事者同士が調停で対面することは基本的にはありません。

 夫は婚姻費用を支払う義務を負っていますので、夫が支払いを拒む場合、調停委員から夫に対し、婚姻費用についての法律的な説明をしてもらい、支払うように説得してもらえる可能性もあります。

⑵ 審判とは

 調停を経ても夫が婚姻費用の支払いに応じない場合、又は婚姻費用の金額について合意に至らない場合、調停は不成立となり、審判に移行します。審判とは、婚姻費用分担義務の有無、婚姻費用の金額について、裁判官が判断する手続きです。

3 早急に婚姻費用分担請求調停を申し立てる必要

 夫が婚姻費用を支払っていない場合、いつまでさかのぼって婚姻費用を請求することができるのでしょうか? 別居をして婚姻費用の請求をしていない場合、別居時にさかのぼって婚姻費用を請求できるわけではありません。実務では、妻が夫に対し、婚姻費用を請求した時から、さかのぼって婚姻費用を請求することができると考えられています。したがって、婚姻費用を請求する場合には、メールや内容証明郵便など、証拠が残る方法で請求するべきです。

 もっとも、婚姻費用の始期については、裁判官の合理的な裁量によって決定されます。裁判官によっては、婚姻費用をさかのぼって請求できるのは、婚姻費用分担請求調停を申し立てた月からと判断することもあり得ます。そのため、婚姻費用が支払われていない場合には、なるべく早く婚姻費用分担請求調停を申し立てるべきです。

4 まとめ

 婚姻費用分担請求調停は、なるべく早く申立てをする必要があります。ただし、調停申立てのために必要な資料を準備する必要があり、調停期日では調停委員を介して相手方と協議をすることとなります。

 婚姻費用の請求についてお悩みの方は、シャローム綜合法律事務所までご相談ください。

 

(弁護士 山本祥大)