2019/03/27
昨年の夏頃から、立て続けに建物明渡のご相談を受けております。
それも、賃貸人側ではなく、賃借人側のご相談です。
不思議なもので、同じような事件の依頼が続くときは本当に続きます。離婚の相談が連続して入ることもありますし、交通事故の相談がなぜかどっと増えるときもあります。この度の建物明渡事件(賃借人側)に関しても、そのようなタームに入っているのかもしれません。
さて、皆様のご相談は、「ある日突然部屋を明け渡してくれ(出て行ってくれ)という通知が来たけど、出て行かなきゃいけないのだろうか?」というものです。明渡しの対象が借家の場合もあれば、借地の場合もあります。
そして、皆様が決まってご質問されるのは、「立退料の相場ってどんなものですか?」という点です。
家主と借家人との間で家屋立ち退きを巡る争いが発生した場合、その紛争解決方法として、立退料が支払われるということは、日常的に行われているものです。
それでは、立退料の具体的な計算式はあるのでしょうか?
結論から申し上げますと、立退料算定の定型的な計算式は存在しません。判例も、「立退料の額の決定は、賃借契約成立の時期および内容、その後における建物利用関係、解約申入れ当時における双方の事情を総合的に比較考量して裁判所がその裁量によって自由に決定しうる性質のもの」であると判示しています(東京高裁昭和50年4月22日判決)。
とはいえ、賃借人の側について賃貸人と交渉する際には、それでもある一定の基準に従って算定した金額を提示する必要があります。
その際に用いられる算定方法として、借家権価格を使用することが多いです。この借家権価格は、借地権価格と異なり、算定に曖昧なところがあり、使用される場面は主に立退料の算定のために限られると言ってもいいぐらいかと思われます。
そして、この借家権価格の算定方法もいくつか存在するのですが、ここでは、とりあえず、最もよく利用される割合方式の計算式を記載しておきましょう。
<割合方式>
<(土地価格)×(借地権割合)×(借家権割合)>+<(建物価格)×(借家権割合)>
計算が単純であるところからも、実際によく利用されていると思います。
このようにして算出された借家権価格を基礎にして、相手方の正当事由の有無・程度や、当方の置かれている具体的事情を加味した上で、立退料の交渉をしていくことになります。
「ある日突然大家さんから一月以内に出て行くように言われた。建物老朽化による改修で、取り壊すとのこと。一か月分の家賃は免除してくれるらしいが、本当に出て行かなければならないのだろうか? 子供の学区が変更になると困るし、そもそも急な話で混乱している。引越費用もバカにならないが、負担してもらえるのだろうか? そして、立退料というものはもらえるのだろうか? もらえるとしたら、一体幾らぐらい請求できるのだろうか?」
このようなお悩みをお持ちの方は、一度お気軽にご相談いただければと思います。
(弁護士 中川内 峰幸)