朝日新聞に中川内弁護士のコメントが掲載されました

朝日新聞に私のコメントが掲載されていますのでお知らせします。
大阪商工信金「調査も説明も十分」「成約は顧客の判断」M&Aで
藤田知也記者の取材による「M&A仲介の罠」第五弾は、「地域金融の責任」との副題で切り込んだ連載記事となります。有料記事とはなりますが、是非ご覧ください。
我が国における中小M&Aにおいて、地域金融機関(地銀、信用組合、信用金庫等)の存在が注目されています。実際、地域金融機関による中小M&Aの成約が続々と発表されています。
以前、私は「地銀にM&A仲介の能力があるのか」というブログを書いたことがあります。しかし、今では地銀を含む地域金融機関の活躍に大きく期待しております。異動が多く、知識の蓄積が困難であることや責任の所在が不明瞭となりがちであること、また優秀な人材はより高給が期待できる民間の仲介会社に入るのではないかという点で人材の確保にも疑問があったからからです。
しかし、昨今の状況ではこれら問題点への対処も見られるようで、人事ローテーションを通常よりも長い期間としたり、原則異動のない専門職制度を導入したり、支店職員を短期間本部に派遣するトレーニー制度を設ける動きなどもあるようです。また上場の仲介会社への出向という流れもあるようですね。育った人材が民間のM&A仲介会社(地域金融機関も民間ではありますが、ここでは区別する意味合いで「民間の」と呼称しています。)に流れないかという点で定着率の問題は依然として残りそうですが、これはどうなるでしょうね。M&A仲介会社の従業員にはキーエンスからの転職組が多いという話はよく聞きますが、今後、最初からM&A仲介業務に携わることを希望して地域金融機関に入職する人材が増えるでしょうか? しばらくは現職の職員の中から専門職への希望者を募るということになりましょうが、その際も民間の仲介会社と同じようにM&Aの成立による成功報酬が担当者のインセンティブとなるような報酬体系を採ってしまうと意味がありません。
さて、組織及び担当者個々人としての知識や能力が担保できるのであれば、M&A仲介の業界内におけるプレイヤーが多いに越したことはありません。特に地域金融機関の参入は価格破壊につながる可能性が期待できます。それに何よりも、民間の仲介会社と異なり、金融庁の監督を受ける地域金融機関には「クリーン」な業務が期待できますし、実際に利用者においても、そのようなイメージを重視してアドバイザリー契約を締結するものと思われます。地銀は株式会社ですが、信用組合や信用金庫は非営利法人であるという点も特色です。
今後も地域金融機関がM&A仲介業界に参入する流れは止まらないでしょう。そしてその際には、上記のとおり「半ば公的」な存在として、民間の仲介会社とは異なる役割が期待されます。その特殊な立ち位置を自覚の上、地域金融機関には存在感を発揮して欲しいと考えます。一部の仲介会社と同じように自社の利益を優先して杜撰な業務を行い、その結果M&Aトラブルを発生させるような失敗は犯さずに、「中小M&Aであれば、まずは地銀(信組、信金)」と言われるほどの存在となれれば、そのことがM&A仲介業界の健全な発展に繋がるものと思われます。
(弁護士 中川内 峰幸)