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【M&A】反社条項を確認しましょう。

【M&A】反社条項を確認しましょう。

引き続きM&Aのお話を。

「反社条項」をご存じでしょうか?

名称だけで大体のイメージは湧くかと思われますが、反社条項とは、契約を締結する際に、自ら又はその関係者が反社会的勢力に属していないことや、契約の相手方等に対して暴力的な要求行為等を行わないことを、相互に確約し保証するための条項です。「反社会的勢力の排除に関する条項」「暴力団排除条項」ともいわれます。

これは特にM&Aの契約書に特有のものではございません。売買契約書や業務委託契約書といったよく見られる契約書においても用いられています。また、金融機関等の約款にも規定されていますので、我々の生活に実は広く浸透しているものです。

契約書の中にこの反社条項を置くことにより、契約の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、直ちに契約を解除することができます(なお、M&Aの場合には、解除はクロージング前に限られることが多いでしょう。詳しくは、本ブログの他の記事をご参照ください。)。また、かかる事実が判明した場合に損害賠償請求ができる旨の規定も併せて置かれることがあります。実際に反社から金銭を回収することができるかは不透明ですが、反社からの請求に対して対等額で相殺を主張できるという点で意味があるといえるでしょう。

コンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)の観点から、反社条項を盛り込むことが社会的に推奨されていますが、それだけでなく、万が一、実際に契約の相手方が反社会的勢力の人間であると判明した場合に、自らを守ることができるように、反社条項は必ず規定することが重要です。

とはいえ、株式譲渡契約書等の雛形には、通常、反社条項がテンプレ的に規定されていますので、反社ではない善良な皆様は、あまり注意せずに読み飛ばしているというのが実情ではないでしょうか。あるいは、ちゃんとした仲介業者が持ってきた案件の当事者が反社なはずないだろう、とお思いになるかもしれません。

しかし、昨今のM&Aに関するトラブルの報道を見るにつけ、どうも組織的集団犯罪ではないかと思われるような事件が多発しているように思えてなりません。

M&Aの手法を利用して安価で企業買収を行い、その対象企業の資産だけを抜き取り、前経営者の個人保証(経営者保証)も引き継がずに失踪するという手口は、その背景に反社的な者の存在を疑わずにはおられません。こうなると、「M&Aトラブル」というよりも、「M&A詐欺」と呼称する方が実態に即しているのではないかと考えます。そして、おそらくはこれと同種の事案ではないかと思われる被害者の方から当事務所へのご相談も、最近いくつか頂戴しております。

また実際に私が過去に手掛けたM&Aのトラブルで裁判となったケースでも、訴訟の相手方が反社ではないかと疑われた事件がありました(結果、それを証明する証拠が入手できなかったのですが。)。

いずれにせよ、反社条項は、単にテンプレ的に規定されているだけと思われるかもしれませんが、実は皆様を守護する「お守り」のような存在です。お時間のある時に、内容をご一読されることをお勧めいたします。

M&Aトラブルでお困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお気軽にお問い合わせください。

詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

【M&A】買主が経営者保証の解除手続きをしてくれない問題

【M&A】買主が経営者保証の解除手続きをしてくれない問題

先の朝日新聞の報道(「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」/藤田知也記者)でも見られるように、悪質な業者がM&A取引の買主となった場合、当初の約束とは異なり、M&Aのクロージング後になっても、売主の経営者保証(個人保証)を解除する手続きをしてくれないというケースがあります。

中小企業が金融機関から借入を行う場合、その代表者が会社の連帯保証人となり、あるいは代表者名義の資産(不動産等)に抵当権が設定されることが一般的です。そしてその後、M&Aで対象会社を売却するに際し、売主(代表者)としてみれば、株式を手放し、対象企業の経営から離脱したわけですから、経営者保証も当然買主側に承継してもらわなければ困るわけであり、当然、そのような前提でM&Aの交渉は進んでいたはずです。通常、株式譲渡契約書の中にも、「買主は、クロージング日後〇か月後以内に、売主の別紙金融機関からの借入につき経営者保証(個人保証)の解除の手続きをする」旨の条項が入れられているはずですが、これを無視して、一向に買主が金融機関との交渉手続きを行わないという問題です。

そのままでは、万が一、対象会社の経営が傾き、かかる金融機関への返済が焦げ付いた場合、売主の個人資産が差し押さえられるおそれが生じますし、また、いつまでもそのおそれを抱いたまま不安定な立ち位置に置かれること自体が、売主にとっては耐えられぬ状況でしょう。

いっそのこと、株式譲渡契約自体を解除して、取引を白紙の状態に戻してしまいましょうか? いいえ、通常、株式譲渡契約の中には、クロージング後の解除を制限する旨の条項が規定されているはずです。かつ、錯誤の主張も制限されていることがほとんどでしょう。したがって、契約の解除はなかなか困難です。表明保証違反や誓約違反がある場合に売主が採れる手法は、事後的な補償請求や損害賠償請求が原則ということになります。

それでは、買主に対して損害賠償請求ができるでしょうか? いいえ、実際に対象会社の弁済が滞り、これに起因して売主の資産が差し押さえられたり、あるいは破産を余儀なくされたなどといった事情がない限り、未だ損害が発生していないということになり、同時点で売主を訴えることは困難でしょう。買主が契約どおりの作為を行わないことにより補償請求あるいは損害賠償請求できるものは、せいぜい慰謝料程度ということになってしまうと考えられます。また、現に売主に損害が発生した後になって満を持して買主に訴訟を提起することができたとしても、損害額全額を回収できるか否かは不透明です。

このように、中小企業のM&Aでは経営者保証をめぐるトラブルが多いところ、これを事後的に解決するのはなかなかに困難であるといった実態があります。

どうすればいいのでしょうか。

株式譲渡契約書に、経営者保証の解除に関する条項を明記することは当然ですが、上に見たように、これは通常そのような契約内容となっており、それでもなおトラブルが発生するからこそ問題となっているわけです。

経営者保証の解除・変更の手続きは、売主が単独でできるわけではなく、買主の協力が必要となりますし、当然のことながら、相手方(債権者:金融機関)のあることですので、必ずこれが首尾よく成功するとは限りません。また、譲渡後にならないと実際の変更手続きができないといった事情もあります。ですので、同問題が残存したままで契約をクロージングして、後は買主の良心に任せるといった危険な態様で取引がなされているケースがあり、問題となるのです。

きちんとするのであれば、クロージング時に、金融機関も交えて、譲渡代金の決済と株主名簿の書き換えをする際に、経営者保証の借入につき一旦買主が金融機関に全額返済を行い、売主を保証債務から解放し、併せて新規の借入を買主の個人保証のもと受けるといった手続きを同時に行うということが考えられます。

なお、時々、「クロージングまではメインバンクにM&Aの話はしないようにとM&A仲介業者に言われていたことから金融機関に相談できなかった」との話を耳にしますが、その時点で当該M&A業者があやしいと気づく必要があります。取引自体が信用できないと思われたら、勇気ある撤退を視野に入れるべきです。

経営者個人保証が外れるかどうかは、売主にとって極めて重要な事項です。買主の資産状況も金融機関に伝えぬままに、ただ「責任をもって必ず解除するから安心して」という買主又はM&A仲介業者の言葉を信用するのは、危険以外の何物でもありません。

売主としては、初めてのことで何もわからぬままに手続きが進行してしまって後戻りできなかったということかもしれません。しかし、一生に一度のことであるだけに、当事者意識をもって取引に臨む必要があります。長年に渡り大切に育てた我が子のような会社の最後がこのような形に終わってしまっては、悔やんでも悔やみきれないでしょう。

以上検討しましたように、中小企業のM&Aにおける経営者保証をめぐるトラブルは少なくありませんし、また、事後的な救済はなかなか困難な問題です。しかし、事案によっては何かしらの対処が可能である場合も想定されます。お困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお問い合わせください。ぜひ、詳しいご事情をお聞かせください。

詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

「中小企業庁『M&Aトラブル』実態把握へ、不適切行為に注意喚起」

「中小企業庁『M&Aトラブル』実態把握へ、不適切行為に注意喚起」

表題の記事に触れました。中小企業庁「M&Aトラブル」実態把握へ、不適切行為に注意喚起(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース

以前このブログでご紹介した朝日新聞の記事(「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」)を受けて、中小企業庁が当該事件の実態把握に動き出したとのことです。また、実態を踏まえて、中小M&Aガイドラインの見直しも検討するとのことです。

同記事では、「中企庁は(中略)M&A仲介業者が買い手企業による契約不履行などのトラブルを把握しながら、そのことを新たな売り手側に伝えず取引を進めれば、利益相反リスクへの対応などを定めた指針に反するとしている。M&A支援機関登録制度の登録業者には指針の順守が求められており、違反すれば登録を取り消される場合がある。」とされています。

このM&A支援機関登録制度とは、2021年8月よりスタートした取り組みで、M&A仲介業者(FAを含む。)が中小企業庁のデータベースに登録される制度です。登録されたM&A仲介業者は、信用力の向上が期待されるほか、M&Aで利用できる補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の対象案件も、同登録制度に登録された者に限るという点で恩恵があるようです。現在3000社ほどが登録されているとのことです。

しかし、同登録を取り消される程度の不利益の告知により、悪質な仲介業者が業界から一掃されるということには決してならないでしょう。そもそも、確信犯的に悪質な仲介を行っている業者は、同登録制度など利用していません。

政府は中小企業のM&Aを強く推進しているところ、このような悪質な仲介業者によるM&Aトラブルの頻発により、大きく水を差される形となりそうです。かねてより問題視されていた点ですが、早急に抜本的な対策が必要となるでしょう。両手取引の禁止や仲介手数料の上限を定めるとなると、一気に業界がシュリンクしてしまうおそれもありますので議論は慎重に進めるべきですが、M&A仲介業者の免許制に関しては、より積極的に検討すべきでしょう。免許を得た者のみが、M&A仲介に携われるということにするわけです。今は、このような制限がありませんので、ブローカーまがいの怪しい業者が跳梁跋扈しているのが現状です。・・・ちなみに、「免許」というのは講学上の用語ではなく、行政学上の分類でいえば「許可(公益上の要請に基づいて一定の行為を一般的に禁止にしておいて、これを特定の場合に解除する行為。自動車の運転免許など。)」か「特許(国民が本来持っていない特殊の権利能力や法的地位を設定する行為。電気・ガス等の供給事業など。)」に該当するのですが、本題から逸れますので、ここでは触れません。

閑話休題。

悪質な仲介業者は、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)など見据えず、高額な仲介報酬目当てでとにかく案件を成就させるだけに躍起となり、後のことは我関せずというスタンスですので、極論すれば、単なる「マッチング」を行っているだけです。マッチングアプリで出会った男女がその後どうなろうが、マッチングアプリ運営会社は責任を持たないというのと同じ発想なのでしょう。このような業者を野放しにしていては、M&A業界の発展もありえません。これを免許制としてM&A仲介業を取り扱える者を健全な仲介業者のみとすることにより、これら問題に対処し業界の健全化に資することは必須であると考えます。

中小企業庁は、M&Aトラブルに関する情報提供受付窓口を設けています。併せて、当事務所の運営するM&Aトラブル相談センターのHPからお問い合わせいただきますと、トラブル解決へ向けてのご相談に対応することが可能です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(2024.5.30 弁護士 中川内 峰幸)

ご挨拶と自己紹介

ご挨拶と自己紹介

1.はじめに

令和6年5月からシャローム綜合法律事務所に入所しました、弁護士の山本祥大と申します。今回は、僭越ながら私の自己紹介をさせていただければと思います。

 

2.司法修習

私は、司法試験に合格後、神戸で司法修習を受けました。

実は、司法試験に合格しても、直ぐに弁護士の仕事ができるわけではありません。原則として、約1年間の司法修習を修了する必要があります。

司法試験までは、基本的な法律科目の条文知識や裁判例、学説について学びます。司法試験の勉強は、ひたすら法律知識を頭に叩き込むというようなイメージです。それに対して、司法修習では、裁判実務(実際の裁判のやり方など)や事実認定(どのようにして裁判所が事実を認定するのか)について学びます。つまり、実務で必要な能力を実践的に学ぶことができます。

司法修習では、裁判所・検察庁・弁護士会で研修を受けます。例えば、検察修習では、取調べや実況見分など実際の捜査を行うこともありました。そして、司法修習の最後には、司法修習生考試(通称「二回試験」)と呼ばれる5日間の試験を受ける必要があります。

 

3.当事務所への入所

司法修習を経て、私は、全国にオフィスを構える法律事務所で弁護士としてのスタートを切りました。法律事務所の規模が大きかったため、全国から様々な相談に対応し、組織的に多くの事件に対応していました。

一方で、組織としてではなく、弁護士である私個人として、より地域に根差し、依頼者に寄り添った仕事がしたいという思いが強くなり、シャローム綜合法律事務所に移籍する運びとなりました。

当事務所は、昭和45年に開設されて以来、神戸に根差した歴史ある事務所です。現在は、代表と私の弁護士2名体制で事件に取り組んでいます。そして、当事務所では、一人ひとりの依頼者のニーズに合わせて、依頼者に寄り添った丁寧な対応を心がけております。私自身も、弁護士として依頼者の抱える悩みに全力で向き合って参ります。

 

4.趣味

最後に、私の趣味についてお話します。

1つ目は、登山です。学生時代から登山をしています。

直近では、燕岳や西穂高などの山に登りました。大自然の中で汗を流しながらひたすら登り続ける間は、日頃の悩みなどを忘れることができ、その先にある山頂からの景色は素晴らしいもので疲れも吹き飛びます。

2つ目は、サイクリングです。学生時代はロードバイクで琵琶湖や宍道湖を一周するなどしていました。今では学生時代のような体力はありませんが、事務所まで自転車通勤をしており、毎朝少しばかりのサイクリングを楽しんでします。

2024.5.14 弁護士 山本祥大)

 

「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」

「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」

「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」という朝日新聞の連載記事(藤田知也記者・全6回)を読みました。有料記事なので転載することはできませんが、興味のある方はご覧になってみてください。

連載「M&A仲介の罠」一覧 – A-stories(エーストーリーズ):朝日新聞デジタル (asahi.com)

内容としては、タイトルどおり、M&A仲介業者の問題点について警鐘を鳴らす記事であり(M&A仲介業者の問題点については、このブログでも過去に述べたことがあります。)、その点につき特段目新しいものはなかったのですが、記事が取り上げている具体的事件に強く興味を惹かれました。

すなわち、表向きは事業再生を目的とする特定の法人グループが、数多くのM&Aを用いて子会社化した企業から同法人グループへと資金移動をさせている(結果、子会社が破綻。)といった実に不可解な事例を取材した記事でした。同法人グループの代表は、現在行方不明とのことです。

しかし結局のところ、同記事では、この法人グループの(あるいは同グループ代表の)真の意図がどこにあったのかという点が明らかとなっていないことから、読了感としては、いささか消化不良のもやもや感が残る内容でした。

これは少し前に世間を騒がせたトケマッチのような、当初から計画された犯罪行為なのか(とすると、模倣犯が発生しうるのか、あるいは集団的犯罪で別に黒幕が存在するのか…同代表の行動からすると、そのような気もします。)、あるいは本当にただ自転車操業的にM&Aを繰り返して進退窮まったのか(これはあまり考えられないと思うのですが…)。全容が解明した暁には、ぜひとも続報を読んでみたいところです。

いずれにせよ、M&Aは仲介業者におんぶにだっこでは大変なことになるということの一事例であることには間違いありません。また、ある程度の売り上げがあるといっても現状で赤字に陥っている会社を購入したいと希望する者が現れた場合に、その意図を探る作業は当然に必要でしょう。M&Aを用いる事業再生は、そんなに簡単なものではありませんし、火の車の会社を引き取ってくれてかつ個人保証も承継してくれるなどという「うまい話」がそうそう転がっていると考えるのは危険です。

そして上述のとおり、M&A仲介業者の構造的問題についてはかねてから指摘がなされているところですが、M&A後のトラブルを回避するためには、売主及び買主が当事者意識をもって取引に応じる必要があるということは、このような記事で繰り返し周知していく必要があると考えます。

シャローム綜合法律事務所では、M&Aに関するトラブルのご相談もお受けしております。詳しくは、下記のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

山本祥大弁護士が入所しました

山本祥大弁護士が入所しました

この度、当事務所は新たに山本祥大弁護士を迎えました。

所員一丸となって、より質の高いリーガルサービスを提供していく所存でございますので、ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。

(弁護士 中川内 峰幸)

会議室を拡張しました

事務所拡張に伴い、新たな会議室を設けました。

もちろん完全個室ですので、プライバシーに配慮した環境で、ゆったりと法律相談をお受けすることができます。

また、ご相談者様のお気持ちが少しでも明るくなるようにと、採光のよい間取りの一室となっております。

皆様のご相談をお待ちしております。

   

  

     

     

M&Aトラブル相談センター

M&Aトラブル相談センター

このブログでも何度かご紹介しておりますが、過去に企業内でM&Aの案件に多く携わっていたこともあり、独立して法律事務所を構えた後も、M&Aに関するトラブルのご相談をしばしば頂戴しておりました。

近年そのようなご相談が増加傾向にありますので、この度、「M&Aトラブル相談センター」と銘打ち、専用のHPを立ち上げさせていただく運びとなりました。

随時情報を更新していく予定ですので、こちらのHPも何卒よろしくお願い申し上げます。

詳しくは、下のバナーをクリックください。

(2024.2.27 弁護士 中川内 峰幸)

 

勤務弁護士募集

勤務弁護士募集

シャローム綜合法律事務所では、業務拡大につき、勤務弁護士を募集しております。

現在、77期司法修習生のご応募もお待ちしておりますが、既に実務でご活躍されている先生方(インハウスからの転身をお考えの方や、女性の方も歓迎です。)のご応募もお受けしております。

詳しくは、ひまわり求人求職ナビの掲載内容をご覧ください。

【募集は終了いたしました】

M&Aのトラブル類型

M&Aのトラブル類型

更にM&Aのお話を。

M&Aに関する紛争のご相談で最も多いのが表明保証違反だというのは、以前のブログで書きました。それでは、他にはどのようなご相談が多いでしょうか。以下、備忘録的にまとめておきます。ご自身のケースと似ているという方は、ぜひご相談ください。

① 表明保証違反

 表明保証の内容は多岐にわたりますが、通常は、以下のような内容が一般的です(なお、株式譲渡契約を念頭に置いています。)。これらにつき事実と異なる点があると後日判明した場合、責任追及の可否が問題となります。

・本契約に必要となる社内手続や監督官庁の許認可等の法令上必要な手続が完了していること

・株式数・株式の種類(新株予約権等がないこと)・株主名簿の記載が真実であること及び売主が対象株式の権利を有していること(質権等の負担もないこと)

・対象会社の貸借対照表及び損益計算書が日本における公正妥当な会計基準により作成され、各作成基準日時点の財政状態・経営状態を適正に示していること・簿外債務を負担していないこと

・租税・公租公課の未払いがなく、適正な申告を行っており、これを否認する課税処分がなされるおそれがないこと

・取引先に対する重大な債務不履行がないこと、現在継続中の訴訟等がないこと

・チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)がないこと

・従業員・労働組合との間で紛争がないこと、給与・退職金等の未払債務がないこと

・新たに重大な資産の譲渡・処分・借入・保証・担保設定等をしないこと

・新たに設備投資や非経常的な契約締結等をしないこと

・増資、減資、株式分割、合併、会社分割、株式交換又は株式移転をしないこと

・対象事業の運営又は価値に関連を有する重要な文書及び情報で買主から開示請求を受けたものを全て開示しており、これらが重要な点で真実かつ正確であること

・反社条項

 

② 競業避止義務違反

 売主は、M&A実行後の数年間は、対象会社と競合関係に立つ業務を行わず、又は第三者に行わせないという条項が規定されることがよく見られます。この点、事業譲渡の場合は、会社法で規定されていますが、株式譲渡では明文の規定が存在しません。したがって、契約書の中で競業避止義務につき定めておくことが重要です。ただし、M&Aの当事者が市場において一定の規模を有している場合で、競業避止の地域・期間・商品等が広範囲に渡っている場合には、独占禁止法に抵触する可能性がありますので注意が必要です。またそのような場合でなくても、売主の職業選択の自由を侵さない程度にとどめることが必要です。また、この点は、従業員の引き抜き、顧客奪取などの問題とも絡んできますし、売主が第三者を介して競業する業務を行う場合の立証の問題も生じます。

 

③ 従業員問題

 経営者が変わることにより、従業員が離反することがあります。そのような場合を想定して、従業員への説明の方法・タイミング等につき注意深くスキームを進めていくことが通常ですが、旧経営者がカリスマであった場合には特にこのような問題が顕在化します。従業員の会社に対する忠誠心が低下し、生産性が下がり、業務が停滞し、一気に業績が悪化することにつながり得ます。小売業や飲食業の場合は、明日店舗を開けられないという状況に陥ると大変です。また、かかる労働者が、単に退職するのみならず、従来は問題視されていなかった未払残業代等の請求をしてくる場合も想定されます。この点は、上記表明保証責任ともからむ問題となります。

 

④ 取引先・顧客の離反

 クロージング後に、大きな取引先が対象会社との取引を停止してしまうという事態も想定されます。これは、上記COC条項がある場合は表明保証違反の問題として捉えることが比較的容易ですが、そうでない場合にはなかなか厄介な事実認定の問題となります。M&A後速やかに買主が取引先へのフォローをしなかったことから、取引先が将来の取引継続に不安を感じて取引を停止する場合もあり、そのようなケースでは、果たして売主に責任があるといえるか非常に困難な場合があるからです。

 

⑤ 顧問契約の解除

 業務の引継の必要性や、あるいは従業員や取引先との関係を軟着陸させる目的もあり、旧経営者が顧問等の名目で一定期間、引き続き会社に残るという場合がよく見られます。しかし、上に見てきたような問題が売主・買主間で勃発し、顧問契約を一方的に破棄されたり、顧問料を支払わなかったりというケースが散見されます。莫大な譲渡価額を得て左うちわの旧経営者であれば格別、半ば不本意な形での自社売却を余儀なくされた旧経営者の中には、引き続き得られるはずであった顧問料を生活の糧として期待している場合もあり、深刻な事態となります。

 

⑥ 仲介業者とのトラブル

 これも以前のブログで述べました。M&A仲介業者との間の紛争事例も増加しています。

 

⑦ 経営者保証の引継

 旧経営者が負担していた対象会社の保証債務(経営者保証)を、クロージング後に買主が引き継ぐという従前の約束に反し、買主がこの引継・承継の手続を行わず、依然として旧経営者が保証債務から離脱できないという問題です。金融機関の同意がなければ承継手続ができないことから、株式譲渡契約書には努力義務として規定されていることが多いですが、クロージング前に金融機関との事前相談を行うことによって紛争発生を未然に防げる場合が多いと考えられます。

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他にも様々なM&Aに関するトラブルのご相談をいただいております。一つでもご自身のケースに当てはまるとお考えの方は、どうぞお気軽に、神戸のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせください。詳しくは、下記M&Aトラブル相談センターのバナーをクリックください。

(2023.9.25 弁護士 中川内 峰幸)