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コロナの影響 ご相談ください

コロナの影響 ご相談ください

緊急事態宣言が解除されはしましたが、コロナウイルスが消滅したわけではなく、また、ワクチンが開発されたわけでもありませんので、引き続き厳重な警戒が必要です。コロナに感染された皆様、感染拡大により生活に影響を受けられた皆様には謹んでお見舞い申し上げます。

さて、コロナの影響は当事務所の業務にも見られます。債務整理のご相談は従前より多いのですが、よくある個人の消費者金融からの借入といったご相談に加え、資金繰りがにわかに悪化した自営の方(法人含む。)や、大きな企業にお勤めの方からのご相談が増えております。これは明らかにコロナの影響だと思われます。自粛等による経済の悪化が、直ちに市民生活に影を落とす結果となっている模様です。

私の周辺では、コロナに感染したという方は幸いにも今のところゼロなのですが、このようなご相談者の属性の変化から、コロナの恐ろしさ・やるせなさを間接的に実感しているところです。どうかお一人で悩まず、是非ご相談ください。

その他の変化としては、離婚のご相談も若干増えているような気がします。海外では自粛生活中にDVが増加したという話も聞きます。

また、他の弁護士の間では、労働事件(解雇・賃金未払等)が増えたという話も聞きますが、今のところ当事務所ではそのようなご相談が目に見えて増えたという事実はありません。これは、今後増えるのかもしれませんが。

そして、私が顧問をつとめておりますマナ助産院の「小さないのちのドア」ですが、連日各種媒体で記事を見るように、10代の妊娠の相談が激増しております。コロナの影響で子供たちが恋人と共に過ごす時間が増えたことが要因であると分析しております。由々しき事態です。より多くの方々に知っていただきたい事実です。なお、小さないのちのドアでは、現在マタニティホームの建設に向けてクラウドファウンディングに挑戦しているところです。ご支援頂戴できましたら幸いです。→ https://readyfor.jp/projects/inoti-door3

逆に減ったなと思うのが刑事事件です。私は日頃、積極的に刑事事件を取り扱っているわけではありませんので、国選が主なのですが、名簿順に配転される件数が、ここのところかなり少ないような気がします。自粛で人と人との間の接触が減少したことにより、粗暴犯が減ったのでしょうか。あるいは、捜査機関の方で、逮捕勾留に謙抑的な姿勢があるのでしょうか。これはわかりません。

いずれにせよ、このように誰しもが大変な時期です。困っている方がいらっしゃる以上、当事務所は平常運転で業務を行っております。お越しの際は、受付のアルコールで手指の消毒をお願いいたします(手をかざすとセンサーが反応してプシュッとアルコールが噴霧されます。)。また、相談ブースのテーブル上には飛沫感染対策として、透明のアクリル板を設置させていただいておりますと共に、弁護士・事務員共にマスクを着用させていただいております。あらかじめご理解ください。さらに、換気のため、複数の窓を開けておりますが、ご相談内容等、個人情報が他に漏れないよう厳に注意しておりますのでご安心ください。

たしかに「3蜜」を避ける必要はありますが、問題を放置してお一人で悩んでいても、何も解決はできません。お困りごとがございましたら、是非お問い合わせください。

(2020.6.3 弁護士 中川内 峰幸)

新型コロナ

新型コロナ

新型コロナウイルスのパンデミックにより、正に世界中が大混乱の様相を呈しています。

色々と先行きが見えず不安な状況ではありますが、結局のところ、個々人で自衛するより選択肢はないようですね。

当事務所も、体調が悪い場合には各々自己判断で自宅待機する旨、事務員と共有してありますし、事務所内の換気や、ドアノブ等の消毒も徹底するようにしております。

ご依頼者の方々も、ご体調がすぐれない際には、お越しになる前に当事務所までご一報ください。

また、受付にアルコールを設置しておりますので、ご来所の際はぜひご利用ください。このアルコールも転売の対象となり、ネット上ではかなり高額での取引がなされているようです。当事務所備蓄のアルコールは、このペースですと、おそらく10月あたりまではもちそうな感じです。

裁判所の方も、期日を柔軟に変更するようになっているみたいですし、傍聴席も一席飛ばしで座るようにという運用になっているようです。また、コロナの影響で自営が立ち行かなくなったというご相談者もチラホラお見えになるようになりました。

誰もが過去に経験したことのない状況です。事態を真剣に注視して、自分の頭で行動する必要がありそうです。とはいえ、不必要に深刻になり過ぎてもよくなさそうです。

日々やるべきことを一つ一つこなしつつ、意識的に楽しい時間も確保し、免疫を高めていきたいところです。

(2020.3.24 弁護士 中川内 峰幸)

2020年

2020年

新しい年を迎えました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

当事務所は、1月6日より仕事始めとさせていただいておりましたが、おかげさまで新年早々、既に数多くのご相談を頂戴しております。オリンピックイヤーの今年は様々な出来事が目白押しだと思いますが、地に足をつけて参りたいと考えております。

さて、昨年の1月最初の当ブログで、「今年はM&A関連の業務を増やしたい」と書いたのですが、幸いなことに、その後M&A関連の業務が実際に増えまして、現在も複数の案件を抱えております。

その多くは、会社を売却した後の紛争です。買主側の場合もあれば、売主側の場合もあります。また、売主・買主間の紛争のみならず、請求の相手方を仲介会社とするものもあります。先日、2019年の日本企業が関わったM&Aの件数が3年連続で過去最多を更新したとの記事に触れました。それに伴い、M&Aに関連する紛争も、今後益々増加するものと考えます。当事務所では、今年も引き続きM&A関連の業務を増やしていきたいと考えております。

その他の案件としては、今年は、弁護士登録時の初心に戻り、相続や離婚といった家事事件にも注力できればと考えております。また、引き続き、「小さないのちのドア」の方でもお役に立てればと思います。

さてさて、このブログを書いている時点で、1月も半分が終わりました。一年の24分の1が既に終わったということですね(!) 時の経つ速さに驚かされますが、一日一日を大切に過ごしていきたいと思います。

皆様にとりましても、本年が幸多き一年となりますようお祈り申し上げます。何か法的紛争でお困りの方はお問い合わせください。

(令和2年1月14日 弁護士 中川内峰幸)

小さないのちのドア1周年記念公演

小さないのちのドア1周年記念公演

大分前の話で恐縮ですが、私が理事をしております「小さないのちのドア」の1周年記念公演がありました。

森祐理さんの歌や、水谷修氏の講演もあり、大変有意義な時間となりました。会場も満員で、報道陣の方々も来られていましたので、この活動に対する世間の関心の高さを実感いたしました。

皆様の寄付で成り立っている取り組みです。人員体制においても、資金面においても、まだまだ脆弱です。多くの相談が殺到するとパンクしてしまいます。永続的な活動のためには、今後、このような施設が各都道府県にひとつは開設されるような状況となることが必要ではないかと考えます。そしてそのためには、この小さないのちのドアの日々の活動が試金石になるものと思われます。身が引き締まる思いがすると同時に、24時間体制で業務を担当されているスタッフの皆さんには頭が下がる思いでいっぱいです。

(2019.11.29 弁護士 中川内 峰幸)

当事務所について

当事務所について

当事務所の前身である「宮永法律事務所」は、宮永堯史(みやながたかし)弁護士が昭和45年に開設しました。以来、実に50年近くの長きに渡り、法的トラブルを抱えた方々の紛争解決のお手伝いを数多くさせていただいております。

宮永弁護士は敬虔なクリスチャンであり、そのことが関係するのかどうかは分かりませんが、事務所経営という観点からは必ずしも「優良」とはいえないような事件、つまり赤字になる事件であったとしても、それが社会的正義に反しており、当人を何とかして助けてあげたいと強く思うような場合には、「私に任せなさい!」と言って、採算度外視で受任していたことが多々あります。他の法律事務所では到底引き受けてもらえないような事件の、最後の駆け込み寺のような感じでしょうか。事務所経営的には大変ですが、このような弁護士がいてもいいのではないかと私は思います。宮永弁護士に関しましては、面白い逸話が数多くありますので、またどこかでお話しする機会を持てればと思います。

平成28年に、事務所名を「シャローム綜合法律事務所」へと変更いたしました。「シャローム」とは、ヘブライ語で「平和」を意味する言葉であり、また挨拶のひとつでもあり、日本語の「こんにちは」に相当します。今まで以上に、関係者の皆様方との信頼関係を大切にし、法曹としての責務を果たしていきたいとの思いを込めました。平成30年に、私が代表を引き継ぎました。

そして、令和という新しい元号を迎え、この度、宮永弁護士が弁護士登録を取消すこととなりました。今後は、当事務所の相談役として、引き続き皆様方へのより良い法的サービスの提供を心掛け、益々精進する旨を本人から聞いております。

今後とも倍旧のご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。

(2019.7.31  弁護士 中川内 峰幸)

 

立退料の相場

立退料の相場

昨年の夏頃から、立て続けに建物明渡のご相談を受けております。

それも、賃貸人側ではなく、賃借人側のご相談です。

不思議なもので、同じような事件の依頼が続くときは本当に続きます。離婚の相談が連続して入ることもありますし、交通事故の相談がなぜかどっと増えるときもあります。この度の建物明渡事件(賃借人側)に関しても、そのようなタームに入っているのかもしれません。

さて、皆様のご相談は、「ある日突然部屋を明け渡してくれ(出て行ってくれ)という通知が来たけど、出て行かなきゃいけないのだろうか?」というものです。明渡しの対象が借家の場合もあれば、借地の場合もあります。

そして、皆様が決まってご質問されるのは、「立退料の相場ってどんなものですか?」という点です。

家主と借家人との間で家屋立ち退きを巡る争いが発生した場合、その紛争解決方法として、立退料が支払われるということは、日常的に行われているものです。

それでは、立退料の具体的な計算式はあるのでしょうか?

結論から申し上げますと、立退料算定の定型的な計算式は存在しません。判例も、「立退料の額の決定は、賃借契約成立の時期および内容、その後における建物利用関係、解約申入れ当時における双方の事情を総合的に比較考量して裁判所がその裁量によって自由に決定しうる性質のもの」であると判示しています(東京高裁昭和50年4月22日判決)。

とはいえ、賃借人の側について賃貸人と交渉する際には、それでもある一定の基準に従って算定した金額を提示する必要があります。

その際に用いられる算定方法として、借家権価格を使用することが多いです。この借家権価格は、借地権価格と異なり、算定に曖昧なところがあり、使用される場面は主に立退料の算定のために限られると言ってもいいぐらいかと思われます。

そして、この借家権価格の算定方法もいくつか存在するのですが、ここでは、とりあえず、最もよく利用される割合方式の計算式を記載しておきましょう。

<割合方式>

<(土地価格)×(借地権割合)×(借家権割合)>+<(建物価格)×(借家権割合)>

計算が単純であるところからも、実際によく利用されていると思います。

このようにして算出された借家権価格を基礎にして、相手方の正当事由の有無・程度や、当方の置かれている具体的事情を加味した上で、立退料の交渉をしていくことになります。

「ある日突然大家さんから一月以内に出て行くように言われた。建物老朽化による改修で、取り壊すとのこと。一か月分の家賃は免除してくれるらしいが、本当に出て行かなければならないのだろうか? 子供の学区が変更になると困るし、そもそも急な話で混乱している。引越費用もバカにならないが、負担してもらえるのだろうか? そして、立退料というものはもらえるのだろうか? もらえるとしたら、一体幾らぐらい請求できるのだろうか?」

このようなお悩みをお持ちの方は、一度お気軽にご相談いただければと思います。

(弁護士 中川内 峰幸)

新年の御挨拶

新年の御挨拶

明けましておめでとうございます。

旧年中は格別のご厚情をいただき、誠にありがとうございました。

おかげさまで、当事務所は昨年、数多くのご依頼をいただき、皆様の法的紛争解決のお手伝いをさせていただくことができました。

本年も、更なる法的サービスの向上に努めてまいりますので、より一層のご支援・お引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

さて、年始ということで、新しいことに挑戦される方も多いのではないでしょうか。

私も、今年は何か新しい分野に取り組んでみたいと考えております。

現状、当事務所でご依頼が多いのは、債務整理や交通事故、労働で、離婚、相続・後見、一般民事がそれに続くといった状況です。

今年は、M&A関係の業務に携わることができればと考えております。

以前、インハウス(企業内弁護士)をしておりました際、譲渡価額数千万円から数十億円規模の案件を数多くこなしました。その経験を生かして、当事務所においても、M&Aがらみの業務を遂行できればと考えております。

もっとも、法務DDや契約書の起案・審査といった業務に関しては、大手の法律事務所に流れる傾向にありますので(企業としても、株主に対する説明、又は責任の所在を明らかにするという観点から、ローファームの名前を重視します。)、当事務所のような、弁護士二名体制の小規模な法律事務所にはなかなか声がかからないと思われます。

ですので、考えているのは、クロージング後のレプワラ違反等に基づく損害賠償請求や、より興味深い案件として、仲介業者又はFAに対する損害賠償請求です。

上に申し上げました企業内弁護士時代、数多くの仲介業者やFAと仕事をしましたが、これらは常に膨大な案件を抱えており、また成約を急ぐあまり、中には相当に杜撰な業務を行っている業者がいるということは、経験として実感があります。実際、日本国内におけるM&Aの活性化に伴い、仲介業者やFAに対する損害賠償請求も増えていると聞きます。そのような中、外部の法律事務所として案件に関わるのではなく、企業の内部からその全容を経験した者として、これらにつき窮状を訴えている方々の損害回復のお手伝いをさせていただくことは、大げさに言えば、ある種使命のような気もします。

「とんとん拍子で会社を譲渡してしまったけれど、最初に思っていたのと違う状況で売ってしまった。」

「買ったはいいけど、表明保障条項違反の事実が出てきた。」

「仲介業者が持ってきた資料の重要な部分が明らかに事実と反しており、調べれば簡単に分かることなのに一向に調査してくれなかったので変な会社を買ってしまった。」

そのようなお悩みをお持ちの方は、当事務所までお問い合わせいただければと思います。一緒に解決策を検討しましょう。

さて、新年早々、寒波が到来するとの予報もあるようです。昨年は台風や地震等災害が多発し、心痛ましいニュースも多かったですが、本年は一転して穏やかな年となればと思います。

皆様にとりまして、本年が幸多き素晴らしい一年となりますよう心からお祈り申し上げます。

(弁護士 中川内峰幸 / 2019.1.8)

成年被後見人の遺言作成

成年被後見人の遺言作成

先日、私が後見人となっている方の遺言作成事件が無事終了しました。

たかが遺言作成で大層なと思われるかもしれませんが、通常の場合と異なり、成年被後見人が遺言を作成する際には、なかなかに高いハードルがあるのです。民法973条では、以下の要件が定められています。

① 成年被後見人の事理弁識能力が一時回復したこと

② 医師2名以上の立会い

③ 遺言に立ち会った医師が、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、署名押印をすること

すなわち、成年被後見人であったとしても、その判断能力が、遺言ができる程度に回復していれば、医師2名の立会いの下で遺言を作成することができます。

この方の場合、法定後見の申立ての際に、後見か補佐かの選択に迷ったほどでしたし、遺言の内容も非常に簡潔なものでしたので、判断能力に関しては問題がありませんでした。ですので、①の要件はクリアしました。

しかし、問題は、②③の医師2名の確保です。ドクターはただでさえ日常の業務に忙殺されている上に、見ず知らずの人間の遺言作成に協力して下さいと言われ、「ハイわかりました」と抵抗なく承諾して下さる方はいないでしょう。この方の場合も、医師2名の確保には大変苦労させられました。

最初は、入院先のドクターにお願いして、その方と、その病院の他のドクターを用意していただきました。が、本人確認の書類等をお願いしているうちに面倒に思われたのか、最終的にはキャンセルされてしまいました。

仕方がないので、他のドクターを探すことになりました。そこで、ご本人がいつも外来で通われている病院のドクターにお願いしたところ、当然ながら、当初いくらか懸念事項を持たれたようですが、丁寧にご説明した結果、引き受けていただけることになりました。しかし、もう1名のドクターがみつかりません。交通事故等で単に診断書や意見書を書いてもらうのとはわけが違うのですから、医師2名を確保するのは簡単ではありません。最終的には、私の中高時代の同級生にお願いして、遠方からわざわざ来てもらうことになりました。

これで終わりではありませんでした。ご本人、ご本人を車椅子で連れて来て下さる方、公証人、立会人2名(私と事務員さん)、ドクター2名、計7名の日程調整に手こずりました。作成場所は、外来でお世話になっている当該ドクターのお部屋をお借りすることになりました。公証人には出張していただきます。特にドクターのスケジュールは調整が難しく、私の同級生のドクターには、午前の診療を終えてすぐに電車に飛び乗って駆けつけてもらうということになりましたが、その日緊急の外来が入った場合は来ることができないということですので、当日も非常にやきもきしました。公証人に何度も日程変更の連絡を入れ、最終的に公正証書遺言作成の日程が決まったのは、事件に着手してから9か月ほどが経過した頃でした。

当日は、とどこおりなく手続きが進められ、無事遺言を作成することができ、ご本人にはとても喜んでいただきました。

帰りの車の中で、その同級生から「なんや最近弁護士がAIに取って代わられるいうけど、そんなん無理やろ。だってお前、AIが医者探して連絡とってセッティングしてとか、そんなん絶対できへんやろ。」と言われました。なるほどと思いました。確かに、それはそうですね。

(弁護士 中川内峰幸)

記章あれこれ

記章あれこれ

神戸地裁でもこの9月から所持品検査が始まりました。空港の保安検査場のように、金属探知機を通り、鞄を開けて係員に中の荷物を見せるといった検査が実施されております。事件や傍聴で裁判所に行かれる場合には、時間帯によっては混むこともありますので、余裕をもって予定よりも少し早めに行かれることをお勧めします。

この所持品検査、東京では以前からありましたが、大阪で本年の1月から導入され、この度、神戸地裁でも実施される運びとなりました。裁判所内での切りつけ事件等物騒なご時世ですので、やむを得ないことと思います。事務員も、身分証を携帯しなければなりませんし、裁判官も例外ではなく、顔パスはできないと聞きました。

ところで、この所持品検査ですが、我々弁護士は、係員に記章(弁護士バッチのことです。)を見せるだけでフリーパスです。偽造品だったらどうするのだろうとも思うのですが、警察の留置場でも、身分確認はこの記章を見せるだけでOKです。記章をまじまじと検査するのも失礼に当たると思うのか、本当にチラッと見せたらおしまいです。

さて、記章はこのように裁判所や留置場へ行くときには常に携帯しておかなければ大変なことになります。裁判所ならば、金属探知機の列に並ぶだけでよいのですが、留置場の場合は、被疑者と接見ができなかったとなると大ごとです。そして、冬場はスーツのジャケットの襟につけておけばよいのですが、冬以外のシーズンではジャケットがありませんので、他の方法で保管して持ち歩かねばなりません。どのように持ち歩くのか。その扱いは弁護士によって様々なようです。

私は、普段から財布の小銭入れの中に、小銭と一緒に入れております。お世話になって尊敬する先生がそのようにされていました。

同期には、桐箱(最初に記章をもらう際にこれに入れて配布されます。中には紫色の布が敷かれており、蓋にはテプラのようなもので登録番号が印字されたシールが貼ってあります。)に入れて大切に持ち歩いている者もいます。

超ベテランの弁護士の方には、真夏でもきちんとジャケットを着て(更にはネクタイもしめて)記章をつけている方もいます。すごいですね。これはまねできません。なお、関連して申し上げますと、ジャケットに記章をつける際も、前後を裏返してつけている方も結構見られます。裁判所外で弁護士だと知られてトラブルに巻き込まれること嫌うのでしょう。

また、冬場でも普段ジャケットにつけない方も多いですね。統計があるのか知りませんが、結構な割合で(特に若手の弁護士は)つけていないのではないでしょうか。日弁連の会則では、職務を行う場合は「帯用」しなければならないと規定されているようです(「帯用」?)。私の場合は、ボス弁に「普段からつけておいた方がいいですよ」と過去に言われたので、なるべくつけるようにはしています。

ところで、この記章は紛失するとなかなか面倒で、弁護士会に紛失届を提出し、再交付の申請をしなければなりません。もちろん手数料が必要となります。また、恥ずかしいことに、紛失した旨が氏名と併せて官報に掲載されてしまいます。官報など誰も見ていないといえばそうなのですが、あまり気持ちのよいものではありません。これが破産者の方は2回も掲載されますので、その気持ちが少しは想像できるような気がします(ところで、この官報掲載費用はどこが負担しているんでしょうか? 上記手数料に含まれているのでしょうか?)。

しかし、実際に紛失する方は結構おりまして、その場合は、再発行された記章の裏に「再1」と刻印されます。もちろん、更にもう一度紛失した場合はこれが「再2」といった具合にランクアップしていきます。

そして、再発行の手続きを行うと、当然新品の記章が渡されるわけですが、ベテランの弁護士がこの金ピカの記章をつけていると、同業者からは「あー、無くしたんだな^^」と思われますし、依頼者には「どうしたんですか?」と言われて、いちいち説明が面倒です。

そこで、ゴシゴシと布で擦ったりして金メッキを剥がし、その下の銀面を表に出そうとするわけですが、自然な感じでうまく加工するのは至難の業です。ジーンズのようにユーズド加工する業者がいればいいのですが、そこまでの需要はありませんので、やはりDIYが必要となります。

私の知り合いの弁護士は、もう故人ですが、自宅のガスコンロであぶって経年劣化を人工的に作出しようと試みておりました。おそらく、「金は可燃性が高い」という発想だったのでしょう。 結果…たしかに金メッキは見事に剥げたのですが、艶なしの鈍い、何とも“すすけた”色になってしまい、またオイルのような跡もついてしまい、やはり自然な感じの風合いにはなりませんでした。あれはやってしまった後に後悔したのでしょうか。。

かと思うと、これを機に18金の記章(というものがあるのです。)にしようという方もいて、いわく、「これなら落としたらもったいないと思って注意するので二度と無くさないだろう」ということです。色々な考えがあるものです。

私は、無くさないようにして、小銭入れの中で日々記章が硬貨とこすれて自然に育つのを楽しむとします。

(弁護士 中川内峰幸)

夏期休廷

夏期休廷

世間ではまだお盆休み真っ只中という感じでしょうか。当事務所は、お盆の期間も誰かが事務所に出てくるようにしておりますので、何かご用件がありましたら対応が可能であるようにさせていただいております。

さて、一方裁判所は、毎年7月21日から8月31日までの間、「夏期休廷期間」なるものを設定しています。この間、部や係ごとにそれぞれずらして3週間程度のお休みをとっているようですね。当事務所と同じように、職員がずらして休みを取りますので、裁判所に電話をかけると誰かしらが対応してくれます。が、この期間中、期日は一切入りません。ですので、その結果何が起こるかというと、夏期休廷前後の期日の集中・混雑です。 事件を寝かせたくない裁判官は、休廷前に期日を入れたいと思いますし、また、休廷期間中も申立はできることから、その間にたまっていく事件の存在等もあり、9月前半はなかなか期日が入らないといったことになります。それゆえ、7月に期日があった事件の次回期日は9月後半(場合によっては10月)、といったことも一般によく見られます。 裁判所を利用する国民の側からすると、「ただでさえ裁判は時間がかかるのにたまったもんじゃない」「やっぱりお役所仕事だよなー」といったところでしょうか。

ただ、決して裁判所の肩を持つわけではないのですが、裁判官もこの夏期休廷中に遊び惚けているわけではないようです(なかにはそういう方もいるのかもしれませんが。)。この休廷期間に、溜まっていた事件の記録をじっくりと読みなおしたり、思考の整理をしたりと、何かしら自らが抱えている仕事に時間を割いているようです(これは私の修習中の記憶です。)。

一方、我々弁護士も、この夏期休廷期間に、溜まっていた起案や調べもの等に時間を充てることができるので、ある意味「助かる」といった側面があるのは事実です(うらやましいことに、毎年この時期にバカンスに出掛ける弁護士も知っていますが。)。ただし、起案の最中に依頼者に事実の確認をしようと思って電話をかけても、依頼者(法人)もお盆休みに入っていて連絡が取れず、結局起案が進まない、といったこともあります。また、同じく公証役場もこの期間に夏期休暇が設定されているようで、公証人がお休みのため公正証書が作成できないということもあります。どうやら、皆さんが休んでいるときにあわせて自分も休むのがいいのかもしれませんね。

しかし、銀行も夜間休日24時間ネット即時振込が(ようやく)実現されることになる今日、これだけの長期に渡り期日が入らないというのも、よく考えると不自然に思えます。弁護士はこの数年でかなり増員がなされ、様々な議論が沸き起こっていますが、司法試験合格者のうち、単純に裁判官の任用数を増やせばいいのではないかと思うのですが、あまりそのような声は聞こえてきませんね。

(弁護士 中川内峰幸)