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【個人再生】再生委員がつくケースとは

【個人再生】再生委員がつくケースとは

「個人再生委員」という言葉は、皆様あまり耳にすることはないかもしれません。

これが「破産管財人」となると、ある程度イメージが湧くかもしれませんね。破産管財人は、自己破産手続を申し立てる際、一定の場合に裁判所により選任される者で、申立人代理人とは別の弁護士が選ばれます。選任される代表的なケースとしては、免責不許可事由がある場合や、財産があり配当が予定される場合などが挙げられます。

これと同じく、個人再生委員は、個人再生手続を申し立てた際に、裁判所により選任される者であり、公平中立な機関であるといえます。

個人再生委員がどのような業務を行うかというと、①申立人の財産及び収入状況の調査、②再生計画案につき、申立人に対し必要な勧告を行うこと、といった内容となります。

さて、この個人再生委員、東京地裁本庁で申立をする場合には全件選任されるらしいですが、その他の地域、少なくとも神戸地裁においては、原則選任されませんので、ご安心ください。複雑な事件の場合に、例外的に選任されるという運用となっています。

個人再生委員がつけられると、同委員に対する報酬も数十万円別途必要となりますし、同委員からの質問等にきちんと対応する義務が生じるため、経済的にも、労力的にも、時間的にもしんどい手続となってしまいます。つかない方が楽であることは、間違いありません。

それでは、どのような場合に個人再生委員が付されるのでしょうか? 答えとしては、「複雑な事件」ということになります。そしてどのようなものが「複雑」かというと、事案によるというほかないでしょう。

しかしそれでは説明になりませんので、具体的なお話をしますと、過去に当事務所で取り扱った個人再生事件で再生委員が付されたものとしては、やはり自営業者の方の事件が多いと言えます。すなわち、サラリーマン(給与所得者)であれば、給与明細や源泉等により収入の内容が明瞭ですが、自営業の方は、そこらへんの操作が容易ですし、また、帳簿をつけていても独自ルールにより複雑で収支関係がよくわからないという場合があります。そのようなケースでは、裁判所が個人再生委員を選任して調査させましょうということになりやすいと言えます。

他には、財産の評価が困難なケースなども挙げられるでしょう。当事務所で実際にあったのは、不動産の評価が困難で、固定資産評価額と不動産業者による査定との間に大きな乖離があった事案で、清算価値を把握する目的から個人再生委員が付されたということもありました。

あるいは、家計収支の内容が心もとなく(毎月の収支が赤字ギリギリなど)、履行可能性に不安がある場合などにも、個人再生委員が付されてその点を指導されるといったケースもよくあります。ここでは、破産管財人に毎月家計簿を提出するのと同じような手続きが要請されます。

それ以外では、債務額が多く、かつ、個人の債権者が多数存在する場合なども、同人らが意見を述べたりと複雑な手続きが想定されることから、再生委員が選任される可能性が高まります。また、住宅特則を利用できるケースなのか判然としない事案の場合にも、個人再生委員が付されることがあります。

繰り返しとなりますが、再生委員が付されると、ご依頼者にとってもかなり負担が増大します。当事務所では、再生委員がつく可能性に関しても、事案に則してご説明させていただいております。同委員が選任されることを回避するのであれば、頑張って任意整理するということも考えられますが、それが可能であるかは、お客様の資力次第ということになります。

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(弁護士 中川内 峰幸)

任意整理ができない場合とは

任意整理ができない場合とは

借金問題にお困りの方の中には、自己破産や個人再生といった手続きではなく、任意整理で少しずつでも返済して行きたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。自己破産や個人再生の場合、同居の家族に知られてしまう可能性が高まりますが、任意整理でしたら、人知れずこっそりと債務整理ができる可能性もありますので、そういった意味でも任意整理をご希望のご相談者は結構おられます。

しかし、残念ながら、全ての場合に任意整理ができるというわけではありません。というのは、任意整理は裁判所を使う手続きではなく、弁護士が債権者と個々に交渉をして和解契約を締結するという手続きです。したがいまして、相手方のあることですので、「絶対にこの回数で、この金額で」、ということはお約束できないことになります。

その上で、そもそもはなから任意整理に応じない業者というものが存在します。その多くは、みなし貸金業者といって、現在は貸金業の登録をしておらず、既存の貸付金の回収のみを行っている会社です。一括返済でなければダメだ、と言って譲歩の余地がありません。例えばギルド(旧ハッピークレジット、旧トライト、旧ヴァラモス)などは有名ですね。

また、いわゆる街金と呼ばれる中小規模の業者も、厳しい態度で出てくることが比較的多いと言えます。任意整理に応じないとまではいかなくても、通常の業者よりも和解条件を厳しく提示してくることが多いといえます。この「厳しい」というのは、通常60回での返済に応じる業者が多いところ、これを48回だとか36回といった短期間での返済計画を求めてくるということです。あるいは、「将来利息を乗せろ」という要求をしてくることもあります。ということは、月々の支払額が高くなり、現実問題として弁済費用を捻出できないといった状態に陥ることになり得るということです。

さて、上に見たような属性の業者ではなく、大手の貸金業者であれば間違いなく任意整理ができるかというと、実はそうでもないのです。例えば、アコムやライフカードといった社名は、皆様よく耳にされていると思いますが、任意整理に関しては厳しい対応をしてくる業者です。CM等で親しみやすい雰囲気があることから利用される方も多いでしょうが、返済の際には決してやさしくありません。

また、通常であれば積極的に和解に応じてくれる業者であっても、「通常でない場合」、例えば取引期間が1年程度と短い場合などは、任意整理の和解をまとめることが極めて困難となります。もう1点、換金行為をしている場合も、業者によっては和解に応じてくれないケースが出てきます。例えば、ペイディを利用してアップル製品を購入する方は多いのですが、購入したそのiPhoneだかアップルウォッチだかを既に転売してしまっている場合、同社は途端に厳しい態度となり、任意整理の交渉に一切応じてくれません。

このように、諸々の事情から任意整理ができない場合というものがございます。そして、債権者側の事情とは別問題で、そもそも借金の総額が大きいことから、単純に月々の手取り額から弁済にあてる金額を確保できないという場合もあるでしょう。さらに付け加えるならば、生活保護を受給されている方は任意整理ができません。保護費はその名のとおり生活のための費用です。保護費を借金の返済費用にあてると、場合によっては保護取消となるかもしれませんので、注意が必要です。

以上のように任意整理ができないといった場合には、自己破産や個人再生といった裁判所を使う法的手続の可否を検討することになります。

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(弁護士 中川内 峰幸)

【自己破産】免責不許可事由(着物の購入)

【自己破産】免責不許可事由(着物の購入)

女性の方で、着物を多数購入して債務を増加させてしまったというご相談者が結構いらっしゃいます。

仕事や家庭のストレス等で悩んでいた際、知人に誘われて展示会に足を運んだところ、購入しなければ帰れないような雰囲気となって、割賦契約を結んでしまったというのがお決まりのパターンです。その一回限りならば、ある程度被害者だったといえるのかもしれませんが、興味深いのは、その後も自発的に展示会に赴き、複数回にわたり購入してしまっている方がほとんどという点です。

着物の販売会社も手慣れたもので、手を変え品を変え顧客の購買意欲を煽るのでしょうが、どうやら購入した着物を着用した上で参加する「ミス〇〇」といったような自社大会を用意して、購入者本人をエントリーさせ、「その気にさせる」ということもあるようです。「全国大会まで行ったんです」などとおっしゃるご相談者の話しぶりからは、騙されているという認識も希薄であるように思われます。

いずれにせよ、自身の支払能力を超えた割賦契約を締結し高額の着物を購入するという行為は、破産手続においては、免責不許可事由となりえます。購入価額が多額にのぼる場合には、裁判所により破産管財人が選任され、厳しい調査がなされる可能性が否定できません。

さて、当事務所では、ここ1年に限っても、着物購入の浪費があったという案件で神戸地裁に申し立てたものが複数件あります。中には、管財人がつかず、幸いなことに同時廃止で終わった事件もありますが、これは事案によるとしかいえないでしょうね。着物販売業界では、実際、悪質な業者も散見されますので(弁護士会の中でも問題視している業者があります。)、ある程度は裁判所もその旨を理解してくれているという感覚もあります。とはいえ、やはり浪費は浪費なのですから、(金額にもよりますが)原則管財事件になると考えていただいていた方がよいでしょう。

裁判所への申立に際しては、予め査定を取る必要があるのですが、購入した時には数百万円した着物が、二束三文の値しかつかないことがほとんどです。皆さんいたたまれない気持ちになるようです。また、管財事件となった場合には、着物を実際に管財人弁護士の事務所に持って行ったりする必要も生じます。ご主人に内緒で着物を購入しているケースも多いのですが、今後の家計を正常化するためにも、やはりご主人と一度きちんと話をする方がお勧めです(ご主人に内緒で解決できた事件もありますが、これもケース・バイ・ケースです。)。

管財手続になりますと、時間的にも労力的にも大変な事件となりますので、それに耐えられないという方は、自己破産ではなく、個人再生を選択することによって債務を整理される方もいらっしゃいます(任意整理という手段もありますが、専業主婦の方の場合ですと、おそらく困難なケースが多いと思われます。)。

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(弁護士 中川内 峰幸)

勾留中に病気になってしまったら

勾留中に病気になってしまったら

●はじめに

勾留されてしまった場合、留置場での生活は快適なものではなく、慣れない環境の中で体調を崩される方も多くいらっしゃいます。そのため、私は接見する際、「体調はいかがですか」とお声がけするようにしています。今回のコラムでは、勾留中に病気になってしまったらどうするのかというテーマでお話しします。

●留置場での医療

勾留されている間、月に2回、留置場内で医師による健康診断を受けることができます。健康診断といっても、血圧と体重を測定し、健康状態について医師が口頭で確認するという程度です。健康診断の際に薬がもらえる可能性もありますが、医師によって対応は異なります。また、体調が悪くなった場合には、留置担当官に申し出ることにより、外部の医療機関やかかりつけの医療機関で診察・治療を受けることができます。ただし、私の経験上ですが、吐き気がする、湿疹ができているなどの症状で、外部の医療機関やかかりつけの医療機関での診察・治療を希望したとしても、留置担当官が対応しないということもありました。

では、法律上はどのように定められているのでしょうか。

刑事施設収用法201条は、

① (被留置者が)負傷し、もしくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき

② (被留置者が)飲食物を摂取しない場合において、その生命に危険が及ぶおそれがあるとき

には、速やかに委託する医師による診察その他必要な医療上の措置を執ることを義務付けるとともに、病院又は診療所に通院・入院させることを認めています。

さらに、同法202条は、

留置業務管理者は、負傷し、又は疾病にかかっている被留置者が、当該留置業務管理者が委嘱する医師等以外の医師等を指名して、その診療を受けることを申請した場合において、傷病の種類及び程度、留置施設に留置される前にその医師等による診療を受けていたことその他の事情に照らして、その被留置者の医療上適当であると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、留置施設内又は留置業務管理者が適当と認める病院若しくは診療所において、自弁によりその診療を受けることを許すことができる。

と規定しています。

つまり、かかりつけの医療機関による通院治療も法律上認められる可能性があります。

●もし、適切な診察・治療を受けられない場合

留置担当官に体調不良を申し出たとしても、適切な診察・治療を受けられないこともあり得ます。そのよう場合には、弁護士が、健康状態や病名を聴取し、留置業務管理者に対して適切な医療上の措置を講ずるように申し入れをします。

●おわりに

留置場で体調が悪くなった場合には、留置担当官に伝えるようにしてください。もっとも、留置担当官が怖くて伝えられない、伝えたとしても対応してもらえない場合なども見受けられます。そのような場合は、弁護士から留置担当官に対し、適切な医療措置を講ずるように申し入れをしますので、遠慮なくご相談ください。

(弁護士 山本祥大)

神戸で債務整理をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。

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現在、神戸で借金問題に悩まれている方は、シャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。一緒に解決策を考えましょう!

弁護士に依頼する債務整理の内容としては、大きく分けて、①自己破産、②個人再生、③任意整理といったものがあります。

①自己破産は、イメージがわきやすいと思われます。裁判所に申立をして、借金を帳消しにしてもらう手続きですね(これを免責(めんせき)といいます。)。ただし、自己破産にも2種類ありまして、簡単な手続きと、複雑な手続きに分かれます。簡単な手続きの場合には、神戸地裁では、裁判所に行く必要すらなく、書面審査だけで終わります。しかし、複雑な手続きになりますと、破産管財人弁護士が裁判所によって選任され、色々と調査がなされます。その際には、破産管財人弁護士の事務所にも行かなければならず、色々と質問を受けることになるのですが、これにきちんと対応しなければ、免責の意見をもらえません。また、債権者集会というものが開かれますので、裁判所にも行かなければなりません。裁判所は平日の日中しか開いていませんので、もしかするとお仕事に穴が開いてしまうかもしれません。ですので、簡単な手続きに比べ、複雑な手続きになった場合には、時間的にも労力的にもかなり重たい手続きになります。そして、どちらの手続きになるかは選べないのです。最終的に裁判所が決定することになります。・・・とはいえ、ある程度は事前に予測ができます。免責不許可事由(ギャンブルなどですね。)が極めて大きい場合などには、管財人がつけられる可能性が高まります。また、一定額以上の財産をお持ちの方も、自動的に管財事件となります。

②個人再生は、これも裁判所を使う手続きなのですが、借金を大体5分の1にして、それを3年から5年かけて支払い(36回から60回ということですね。)、最後までゴールできれば、残りの借金が帳消しになるというものです。借金の金額によっては、10分の1になる場合もありますが、最低限支払わないといけない金額は、100万円です。100万円を36回で支払うとなると、月々2万8000円ぐらいですので、それぐらいならば何とかなりそうだという方も多いでしょう。なお、清算価値(せいさんかち)といって、お手持ちの財産が100万円よりも多い場合、例えば150万円お持ちの方は、その150万円が基準となって、これを3年から5年で返していくという計算になります。破産ができない方(マイホームをお持ちの方や、資格制限のある方、また免責不許可事由が大きい方など)は、個人再生手続を利用することが考えられます。

③任意整理は、裁判所を使わない手続きです。弁護士が個別に債権者と交渉をして、将来利息をカットし(これ以上利息で金額が増えないようにして)確定した金額を分割で返済していくという内容で示談をする手続きです。裁判所を使いませんし、相手方のあることですので、絶対にこの金額で、この回数で、というのはお約束できません。業者によって、任意整理に非常に厳しいところもありますし、優しいところもあります。ただし、借入期間が数か月程度と極めて短い場合には、なかなか示談を成立させるのは困難でしょう。クレジットカードで購入した物を転売してしまったという場合には一切交渉に応じないという業者もいます。ただ、自己破産や個人再生といった裁判所を使う手続きは、全ての債権者をリストアップしなければならなくて、漏れがあってはならないのですが、この任意整理の場合には、対象とする債権者を選択できますので、例えば知人からの借入や保証人になってもらっている債務があり、同人に破産や再生の事実を知られたくない場合などには、任意整理で頑張って払っていくという方も多いですね。

当事務所は、先代の弁護士の時代より数えて、実に50年近く債務整理を取り扱っております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

さて、最近、「ネット広告を見て電話した東京の法律事務所や司法書士に任意整理を依頼したが、途中で着手金が払えなくなったので辞任された」と言ってご相談に来られる方が非常に増えております。そこで詳しくお話を伺うと、そもそも任意整理ができるような案件ではなく、最初から自己破産や個人再生で受任するのが相当だと思われるようなことが多々あります。これはよくありませんね。任意整理ならば、自己破産や個人再生と違って、ご依頼者との打ち合わせなども比較的少なくて済むことから、電話やLINEだけで受任して、実際に支払いが可能かどうかなどは無視して債権者ととにかく示談を交わし、後のことは関知しないとして放り出すというケースが散見されます。手取りが18万円なのに、600万円の債務を任意整理して今後月額10万円超を払わせるなんていう内容の事案も見たことがあります。どうやって生活していけというのでしょうか。はっきりいって滅茶苦茶です。はなから任意整理は無理だと、ご相談の段階でアドバイスしなければならない案件です。

誤解を恐れずにいいますと、非弁の可能性があります。非弁とは、弁護士が名義だけを貸して、実際の業務は弁護士以外が機械的に対応する犯罪です。実はこの件は、かねてより問題視されておりまして、弁護士の間でも、「大量広告事務所による債務整理二次被害対策全国会議」なるものが設置されたほどです。極めて恥ずかしいことです。

このような事務所は、弁護士との面談もおろそかにしています。事件を受任する際、弁護士とご依頼者とがきちんと面談をした上で法律相談をしなければならないのですが、これを電話で済ませたり(本当に電話口の相手は弁護士なのか、分かりませんよね。)、後日形式的に弁護士と顔合わせをするだけであったりと、杜撰な業務を行っている事務所もあると聞きます。騙されないようにしてください。

当事務所では、電話やメール、LINE等で委任契約を締結することはありません。ご不便と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、WEB面談や電話相談も行っておりません。全ての方に事務所にお越しいただき、全ての事件で弁護士が直接面談をして、皆様のお悩みに対して個別に法律相談を実施させていただきます。顔と顔を合わせてお話をしなければ、詳細な聞き取りができませんし、皆様からのご質問も不十分に終わってしまう可能性があるからです。そして何よりも、お会いして直接お話を伺わなければ、弁護士とご依頼者との間の信頼関係が構築できないと考えるからです。

ですので、当事務所の債務整理のご相談は、神戸とその周辺のお客様のみを対象とさせていただいております。全国展開はしておりません。東は大阪、西は明石、姫路あたりまでですかね。淡路島からのご相談も、よくお受けさせていただいております。

皆様のお悩みは、一つとして同じものはありません。ですので、お一人お一人の置かれた状況を詳細にお伺いして、それぞれの案件に最適の解決方法をご提案する必要があります。電話やLINEで全国から大量に集客して、機械的にさばくといった事件処理は通常不可能なのです。この点、ご理解を頂戴できれば幸いですし、皆様におかれましても、くれぐれもご注意いただければと思います。

長くなりましたが、神戸で債務整理をご希望の方は、シャローム綜合法律事務所までお気軽にお問い合わせください。まずは電話やメール、LINEで、ご来所いただく日程のご予約をお取りください。弁護士が待っています。

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(弁護士 中川内 峰幸)

M&A仲介業者に対する訴訟提起

M&A仲介業者に対する訴訟提起

朝日新聞の報道によりますと、茨城県などに拠点を置く法人グループが2021年以降、飲食店や建設業者など約30社を買収し、その後トラブルが相次いでいる事件につき、買収された会社の元社長が、マイナビ子会社のマイナビM&Aに対して、9714万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたとのことです。

大手のM&A仲介会社においては、日常的に数多くの訴訟を抱えているということを聞いたことがありますが、それらの一つ一つにつき報道がなされることはありません。この度の事件が大きな社会問題となっていることからこその報道でしょう。

たしかに、この度の朝日新聞の報道は、各方面に大きな影響を与えており、従来より問題視されていたが手付かずであった業界の暗部に対し、確実に一石を投じたと言ってよいでしょう。両手取引による利益相反や高額な手数料といった業界の構造的問題を広く明るみに晒すこととなり、これにより、中小企業庁がガイドラインの見直しを開始しました。また、6月10日には、M&A仲介大手の株価が一斉に急落するといった現象も見られました。

さて、報道に見られる請求額の内容ですが、「契約で約束された個人保証の解除もされず、株式譲渡後の資金流出や被告への報酬が損害にあたるとしている」と記載されています。法律構成が気になるところです。原告は元株主だと思われますが、クロージング後に対象会社の資金が外部へ流出したとしても、これは対象会社に発生した損害であると思われるところ、これを元代表者の固有の損害として請求できるのかという点で、その法律構成が興味深いです。報道では、併せて「今年に入り株式譲渡契約を無効にして会社を解散し」とも記載されており、この点が関係するのかもしれませんが、訴状を見ておりませんので状況は一切不明です。

さて、いざM&A仲介業者を訴えるとして、一般には、当該業者が売主(買主)との間で締結するアドバイザリー契約の中には、損害賠償の条項中、「乙(M&A仲介業者)は、本業務の遂行にあたり、甲(売主又は買主)に損害を与えたときは、故意又は重過失がない限り、甲及びその他の者に対して損害賠償を含む一切の責任を負わない」という旨の免責条項が置かれていることがほとんどです。

また、故意又は重過失によって損害賠償責任が発生する場合であっても、損害額の制限を設けることも多いでしょう。通常は、着手金・中間報酬・成功報酬等の名目で受領した金額を上限とすることがよく見られます。さらには、これも同じく免責条項となりますが、「甲(売主又は買主)は、乙(M&A仲介業者)に対し、甲が自己の最終的な判断及び責任に基づいて、対象企業の選定及び本件提携(株式譲渡等の実行のことです。)を行うこと並びに乙が本件提携に関して一切の責任を負わないことを確約する。」といった内容の条項が置かれることもあります(ただし、効果は消極的に解されるでしょう。)。

そして、そもそもM&A仲介業者が負う善管注意義務とはどの程度のものが要求されるのか、という点も問題となります。これは、当該アドバイザリー契約においてM&A仲介業者が負担する業務の内容・範囲と密接に関連する点であると考えられます。

いずれにせよ、M&A仲介の中には、成約を急ぐばかりか杜撰な業務を行い、また潜在的なリピーターである買主側の利益偏重となるような業者が散見され、これに起因して、後々トラブルとなることが珍しくありません。ですので、M&A仲介の対応にご不満をお持ちの方は、少なくないのです。

「M&A仲介業者の業務に問題があるのではないか」「M&A仲介業者を訴えられないだろうか」とお悩みの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお問い合わせください。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(弁護士 中川内 峰幸)

M&A後のトラブルでお困りの方(関東地方在住の方)

M&A後のトラブルでお困りの方(関東地方在住の方)

この春より「M&Aトラブル相談センター」というサイトを立ち上げましたところ、東京、埼玉、群馬、茨城といった関東地方在住の方々からのお問い合わせを結構いただいております。

当事務所は神戸にあることから、京阪神在住の方々のご相談を想定していたのですが、やはり企業数に比例して、M&Aの件数も東京周辺で多く、必然的にトラブルの発生件数も多いのでしょうね。

「お近くの弁護士を探されてはいかがでしょうか」とお伝えするも、なかなかM&Aトラブルに詳しい弁護士が見つからないということです。たしかに、単なるM&Aならば、取り扱う弁護士は非常に多いかと思われますが、通常、M&Aにおいて弁護士が携わるのは、DD(デューデリ)や契約書作成、その他法律上の助言ぐらいの範囲でしょうから、案件の最初から最後までの「中身」につき熟知する弁護士は限られているのかもしれません。ですので、M&A実施後のトラブルにつき精通している弁護士がなかなか見つからないということもわかるような気がします。

遠方につき(出張費等ご依頼者様にご負担がかかることも想定されますので)最終的に受任に至るかは分かりませんが、ある程度のアドバイスは差し上げることが可能かと存じます。お困りの方は、関東にお住まいの方でも、それ以外の地域にお住いの方でも結構ですので、とりあえずお問い合わせください。

ちなみに、現在ご相談で多いのは、やはり表明保証違反やコベナンツ違反(「契約前に言っていたことと違うじゃないか」という紛争です。)ですが、その中でも、「約束と異なり、買主が経営者保証(個人保証)の解除手続をしてくれない」「株式譲渡契約を解除して白紙に戻したい」といったご相談が増えてきています。

詳しくは、下記のバナーから、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)のサイトへアクセスください。

(弁護士 中川内 峰幸)

【M&A】反社条項を確認しましょう。

【M&A】反社条項を確認しましょう。

引き続きM&Aのお話を。

「反社条項」をご存じでしょうか?

名称だけで大体のイメージは湧くかと思われますが、反社条項とは、契約を締結する際に、自ら又はその関係者が反社会的勢力に属していないことや、契約の相手方等に対して暴力的な要求行為等を行わないことを、相互に確約し保証するための条項です。「反社会的勢力の排除に関する条項」「暴力団排除条項」ともいわれます。

これは特にM&Aの契約書に特有のものではございません。売買契約書や業務委託契約書といったよく見られる契約書においても用いられています。また、金融機関等の約款にも規定されていますので、我々の生活に実は広く浸透しているものです。

契約書の中にこの反社条項を置くことにより、契約の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、直ちに契約を解除することができます(なお、M&Aの場合には、解除はクロージング前に限られることが多いでしょう。詳しくは、本ブログの他の記事をご参照ください。)。また、かかる事実が判明した場合に損害賠償請求ができる旨の規定も併せて置かれることがあります。実際に反社から金銭を回収することができるかは不透明ですが、反社からの請求に対して対等額で相殺を主張できるという点で意味があるといえるでしょう。

コンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)の観点から、反社条項を盛り込むことが社会的に推奨されていますが、それだけでなく、万が一、実際に契約の相手方が反社会的勢力の人間であると判明した場合に、自らを守ることができるように、反社条項は必ず規定することが重要です。

とはいえ、株式譲渡契約書等の雛形には、通常、反社条項がテンプレ的に規定されていますので、反社ではない善良な皆様は、あまり注意せずに読み飛ばしているというのが実情ではないでしょうか。あるいは、ちゃんとした仲介業者が持ってきた案件の当事者が反社なはずないだろう、とお思いになるかもしれません。

しかし、昨今のM&Aに関するトラブルの報道を見るにつけ、どうも組織的集団犯罪ではないかと思われるような事件が多発しているように思えてなりません。

M&Aの手法を利用して安価で企業買収を行い、その対象企業の資産だけを抜き取り、前経営者の個人保証(経営者保証)も引き継がずに失踪するという手口は、その背景に反社的な者の存在を疑わずにはおられません。こうなると、「M&Aトラブル」というよりも、「M&A詐欺」と呼称する方が実態に即しているのではないかと考えます。そして、おそらくはこれと同種の事案ではないかと思われる被害者の方から当事務所へのご相談も、最近いくつか頂戴しております。

また実際に私が過去に手掛けたM&Aのトラブルで裁判となったケースでも、訴訟の相手方が反社ではないかと疑われた事件がありました(結果、それを証明する証拠が入手できなかったのですが。)。

いずれにせよ、反社条項は、単にテンプレ的に規定されているだけと思われるかもしれませんが、実は皆様を守護する「お守り」のような存在です。お時間のある時に、内容をご一読されることをお勧めいたします。

M&Aトラブルでお困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお気軽にお問い合わせください。

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(弁護士 中川内 峰幸)

【M&A】買主が経営者保証の解除手続きをしてくれない問題

【M&A】買主が経営者保証の解除手続きをしてくれない問題

先の朝日新聞の報道(「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」/藤田知也記者)でも見られるように、悪質な業者がM&A取引の買主となった場合、当初の約束とは異なり、M&Aのクロージング後になっても、売主の経営者保証(個人保証)を解除する手続きをしてくれないというケースがあります。

中小企業が金融機関から借入を行う場合、その代表者が会社の連帯保証人となり、あるいは代表者名義の資産(不動産等)に抵当権が設定されることが一般的です。そしてその後、M&Aで対象会社を売却するに際し、売主(代表者)としてみれば、株式を手放し、対象企業の経営から離脱したわけですから、経営者保証も当然買主側に承継してもらわなければ困るわけであり、当然、そのような前提でM&Aの交渉は進んでいたはずです。通常、株式譲渡契約書の中にも、「買主は、クロージング日後〇か月後以内に、売主の別紙金融機関からの借入につき経営者保証(個人保証)の解除の手続きをする」旨の条項が入れられているはずですが、これを無視して、一向に買主が金融機関との交渉手続きを行わないという問題です。

そのままでは、万が一、対象会社の経営が傾き、かかる金融機関への返済が焦げ付いた場合、売主の個人資産が差し押さえられるおそれが生じますし、また、いつまでもそのおそれを抱いたまま不安定な立ち位置に置かれること自体が、売主にとっては耐えられぬ状況でしょう。

いっそのこと、株式譲渡契約自体を解除して、取引を白紙の状態に戻してしまいましょうか? いいえ、通常、株式譲渡契約の中には、クロージング後の解除を制限する旨の条項が規定されているはずです。かつ、錯誤の主張も制限されていることがほとんどでしょう。したがって、契約の解除はなかなか困難です。表明保証違反や誓約違反がある場合に売主が採れる手法は、事後的な補償請求や損害賠償請求が原則ということになります。

それでは、買主に対して損害賠償請求ができるでしょうか? いいえ、実際に対象会社の弁済が滞り、これに起因して売主の資産が差し押さえられたり、あるいは破産を余儀なくされたなどといった事情がない限り、未だ損害が発生していないということになり、同時点で売主を訴えることは困難でしょう。買主が契約どおりの作為を行わないことにより補償請求あるいは損害賠償請求できるものは、せいぜい慰謝料程度ということになってしまうと考えられます。また、現に売主に損害が発生した後になって満を持して買主に訴訟を提起することができたとしても、損害額全額を回収できるか否かは不透明です。

このように、中小企業のM&Aでは経営者保証をめぐるトラブルが多いところ、これを事後的に解決するのはなかなかに困難であるといった実態があります。

どうすればいいのでしょうか。

株式譲渡契約書に、経営者保証の解除に関する条項を明記することは当然ですが、上に見たように、これは通常そのような契約内容となっており、それでもなおトラブルが発生するからこそ問題となっているわけです。

経営者保証の解除・変更の手続きは、売主が単独でできるわけではなく、買主の協力が必要となりますし、当然のことながら、相手方(債権者:金融機関)のあることですので、必ずこれが首尾よく成功するとは限りません。また、譲渡後にならないと実際の変更手続きができないといった事情もあります。ですので、同問題が残存したままで契約をクロージングして、後は買主の良心に任せるといった危険な態様で取引がなされているケースがあり、問題となるのです。

きちんとするのであれば、クロージング時に、金融機関も交えて、譲渡代金の決済と株主名簿の書き換えをする際に、経営者保証の借入につき一旦買主が金融機関に全額返済を行い、売主を保証債務から解放し、併せて新規の借入を買主の個人保証のもと受けるといった手続きを同時に行うということが考えられます。

なお、時々、「クロージングまではメインバンクにM&Aの話はしないようにとM&A仲介業者に言われていたことから金融機関に相談できなかった」との話を耳にしますが、その時点で当該M&A業者があやしいと気づく必要があります。取引自体が信用できないと思われたら、勇気ある撤退を視野に入れるべきです。

経営者個人保証が外れるかどうかは、売主にとって極めて重要な事項です。買主の資産状況も金融機関に伝えぬままに、ただ「責任をもって必ず解除するから安心して」という買主又はM&A仲介業者の言葉を信用するのは、危険以外の何物でもありません。

売主としては、初めてのことで何もわからぬままに手続きが進行してしまって後戻りできなかったということかもしれません。しかし、一生に一度のことであるだけに、当事者意識をもって取引に臨む必要があります。長年に渡り大切に育てた我が子のような会社の最後がこのような形に終わってしまっては、悔やんでも悔やみきれないでしょう。

以上検討しましたように、中小企業のM&Aにおける経営者保証をめぐるトラブルは少なくありませんし、また、事後的な救済はなかなか困難な問題です。しかし、事案によっては何かしらの対処が可能である場合も想定されます。お困りの方は、M&Aトラブル相談センター(シャローム綜合法律事務所)までお問い合わせください。ぜひ、詳しいご事情をお聞かせください。

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(弁護士 中川内 峰幸)

「中小企業庁『M&Aトラブル』実態把握へ、不適切行為に注意喚起」

「中小企業庁『M&Aトラブル』実態把握へ、不適切行為に注意喚起」

表題の記事に触れました。中小企業庁「M&Aトラブル」実態把握へ、不適切行為に注意喚起(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース

以前このブログでご紹介した朝日新聞の記事(「M&A仲介の罠 まやかしの事業承継」)を受けて、中小企業庁が当該事件の実態把握に動き出したとのことです。また、実態を踏まえて、中小M&Aガイドラインの見直しも検討するとのことです。

同記事では、「中企庁は(中略)M&A仲介業者が買い手企業による契約不履行などのトラブルを把握しながら、そのことを新たな売り手側に伝えず取引を進めれば、利益相反リスクへの対応などを定めた指針に反するとしている。M&A支援機関登録制度の登録業者には指針の順守が求められており、違反すれば登録を取り消される場合がある。」とされています。

このM&A支援機関登録制度とは、2021年8月よりスタートした取り組みで、M&A仲介業者(FAを含む。)が中小企業庁のデータベースに登録される制度です。登録されたM&A仲介業者は、信用力の向上が期待されるほか、M&Aで利用できる補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の対象案件も、同登録制度に登録された者に限るという点で恩恵があるようです。現在3000社ほどが登録されているとのことです。

しかし、同登録を取り消される程度の不利益の告知により、悪質な仲介業者が業界から一掃されるということには決してならないでしょう。そもそも、確信犯的に悪質な仲介を行っている業者は、同登録制度など利用していません。

政府は中小企業のM&Aを強く推進しているところ、このような悪質な仲介業者によるM&Aトラブルの頻発により、大きく水を差される形となりそうです。かねてより問題視されていた点ですが、早急に抜本的な対策が必要となるでしょう。両手取引の禁止や仲介手数料の上限を定めるとなると、一気に業界がシュリンクしてしまうおそれもありますので議論は慎重に進めるべきですが、M&A仲介業者の免許制に関しては、より積極的に検討すべきでしょう。免許を得た者のみが、M&A仲介に携われるということにするわけです。今は、このような制限がありませんので、ブローカーまがいの怪しい業者が跳梁跋扈しているのが現状です。・・・ちなみに、「免許」というのは講学上の用語ではなく、行政学上の分類でいえば「許可(公益上の要請に基づいて一定の行為を一般的に禁止にしておいて、これを特定の場合に解除する行為。自動車の運転免許など。)」か「特許(国民が本来持っていない特殊の権利能力や法的地位を設定する行為。電気・ガス等の供給事業など。)」に該当するのですが、本題から逸れますので、ここでは触れません。

閑話休題。

悪質な仲介業者は、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)など見据えず、高額な仲介報酬目当てでとにかく案件を成就させるだけに躍起となり、後のことは我関せずというスタンスですので、極論すれば、単なる「マッチング」を行っているだけです。マッチングアプリで出会った男女がその後どうなろうが、マッチングアプリ運営会社は責任を持たないというのと同じ発想なのでしょう。このような業者を野放しにしていては、M&A業界の発展もありえません。これを免許制としてM&A仲介業を取り扱える者を健全な仲介業者のみとすることにより、これら問題に対処し業界の健全化に資することは必須であると考えます。

中小企業庁は、M&Aトラブルに関する情報提供受付窓口を設けています。併せて、当事務所の運営するM&Aトラブル相談センターのHPからお問い合わせいただきますと、トラブル解決へ向けてのご相談に対応することが可能です。詳しくは、下のバナーをクリックください。

(2024.5.30 弁護士 中川内 峰幸)